【外壁石】ヨーロッパの城や教会や大聖堂の壁の石材の種類や形と地域的な色などの違い【西洋建築】

西洋文化に詳しい王女『ロゼリィ』が解説する『西洋史』

今回はヨーロッパの城や教会や大聖堂の外壁に使われる石についてです。


城・教会・大聖堂・修道院などの外壁に使われる石は、その地域で採れる石材が基本でした。

そのため、地域ごとに特徴や特色があり、そのため建物の微妙な色味も異なってきます。

ヨーロッパの城や教会や宮殿などの床の石材については

こちらの記事
レンガや一部建築については

こちらの記事
の記事にまとめています。

ヨーロッパの地域別の石の種類や特徴

フランスの壁の石材

フランスでは、白色からクリーム色の石灰岩が特徴です。

比較的加工しやすいため、ゴシック大聖堂の繊細な彫刻や装飾に最適で、明るく上品な色合いがフランス建築の優雅なイメージを生み出しています。

石灰岩(ライムストーン)

リュテシアン石灰岩
パリ盆地をはじめとするフランス北部には良質なリュテシアン石灰岩(Lutetian Limestone)が豊富に分布しています。

加工が容易でありながら耐久性が高く、複雑なゴシック装飾(ゴシック美術)を彫り出すのに最適なため、多くの大聖堂で採用されました。

パリのノートルダム大聖堂や、ランス大聖堂、ルーヴル美術館などに使われています。

パリ・ノートルダム大聖堂のリュテシアンルーヴル美術館のリュテシアン

パリ・ノートルダム大聖堂


ランス大聖堂


ルーヴル美術館


トゥフォー石灰岩
トゥフォー石灰岩(Tuffeau)は、ロワール渓谷で採れる白色~クリーム色の柔らかい石灰岩です。

加工しやすく、空気に触れると硬化する特徴があります。

シャンボール城など、ロワール地方の城館や教会、大聖堂で最も代表的な建築石材です。

シャンボール城のトゥフォー石について

シャンボール城


カーン石灰岩
カーン石灰岩(Caen Stone)は、ノルマンディー地方のカーン周辺で採れる淡黄色の石灰岩です。

細かな彫刻に適しており、ロマネスク建築やゴシック建築で広く使用されました。

カーンにある、
  • サン・テティエンヌ教会(男子修道院)
  • サント・トリニテ教会(女子修道院)
をはじめ、
  • カンタベリー大聖堂
  • ウェストミンスター寺院
  • ロンドン塔
など、フランスだけでなくイングランドの教会や城にも多く輸出されました。

参考サイト

サン・テティエンヌ教会


砂岩

ヴォージュ砂岩
ヴォージュ砂岩(Vosges Sandstone)は、ヴォージュ山脈で採れる赤みを帯びた砂岩です。

耐候性に優れ、城や教会、要塞などに多く使用されました。

アルザス地方の歴史的建築を特徴づける石材として知られています。

シュパイアー記念教会


シュパイアーのプロテスタント記念教会に、ヴォージュ砂岩が利用されています。

参考サイト様

ストラスブール大聖堂


ストラスブール大聖堂にも、この石が使われています。

参考サイト様

火山岩

ヴォルヴィック石

クレルモン=フェラン大聖堂


ヴォルヴィック石は、色が黒いのが特徴です。

クレルモン=フェラン大聖堂(聖母被昇天大聖堂)などで用いられ、

こちらのサイト様
にて解説されています。

ドイツの壁の石材

ドイツの石は、赤色砂岩や石灰岩、火山岩など多様な石材が特徴です。

特に赤褐色の砂岩は耐久性が高く、城やロマネスク教会に数多く使用され、重厚で力強い外観がドイツ建築の大きな特徴となっています。

砂岩(サンドストーン)

ブンター砂岩
ブンター砂岩(Buntsandstein)「赤色砂岩」は、ドイツ中南部で広く産出する赤褐色の砂岩です。

耐久性と加工性に優れ、中世の城や教会、大聖堂で広く用いられました。

ハイデルベルク城やフライブルク大聖堂の代表的な石材です。

ハイデルベルク城


1556〜1566年に建てられた、ブンター砂岩を使ったハイデルベルク城。

参考リンク

エルベ砂岩
エルベ砂岩(Elbe Sandstone)は、ザクセン地方で採れる淡黄色の砂岩です。

加工しやすく精密な彫刻に適しているため、教会や宮殿、大聖堂の装飾石材として広く利用されました。

ツヴィンガー宮殿


ツヴィンガー宮殿にエルベ砂岩が使用されています。

参考リンク

火山岩

トラカイト
トラカイト(Trachyte)「粗面岩」は、ライン地方の火山地帯で採れる火山岩です。

硬く耐候性に優れ、ロマネスク教会や大聖堂、城郭の外壁や装飾に多く用いられました。

ライン川流域を代表する建築石材です。

ケルン大聖堂


ケルン大聖堂で、どこで使われているかの解説もあります。

参考サイト様
複数の種類の石が使われていますが、トラカイトは主に外壁の下半分部分に使われているようです。

以前はドイツのドラヘンフェルス(Drachenfels)のトラカイトを使用していましたが、現在はイタリアのモンテメルロ(Montemerlo)のトラキートが使用されていると書かれています。

石灰石

ドイツの石灰石は、特に南部でゾルンホーフェン石灰石などで採石できますが、主に床材・屋根材・壁の薄板などに使われることが多いです。

城や教会など歴史的建造物の石積み壁で実際に使われたという情報は乏しく、外壁の石壁としては、砂岩や火山岩、またはレンガなどの方が有名です。

(シュヴァンシュタイン)
そのような中で、資料として挙げられるのが、あの有名なノイシュヴァンシュタイン城です。

ノイシュヴァンシュタイン城の壁は、他のドイツの城の壁に比べて白いのが特徴で、白鳥石(ドイツ語で「シュヴァンシュタイン」)と呼ばれています。

あの辺りで綺麗な白色の石灰石が当時採石されていたのは事実で、下記のサイト様にて訪問日記が公開されています。

訪問日記サイト
王家の採石場とも呼ばれており、アルターショーフェン大理石といわれるパルトナッハ層に属する石灰石が使われているとのことですが、残念ながら現在はその採石場は閉鎖されていて、跡地になっています。

参考リンク

ノイシュヴァンシュタイン城


イタリアの壁の石材

イタリアは、世界的に有名な白い大理石と、火山活動によって生まれた凝灰岩やトラバーチンが豊富です。

美しい光沢を持つ大理石は、教会や宮殿、彫刻作品に広く用いられ、芸術性と装飾性に優れた建築を支える石材が特徴です。

石灰岩

トラバーチン
トラバーチン(Travertine)「石灰華」は、ローマ近郊のティヴォリで古代ローマ時代から採掘される石灰岩です。

耐久性に優れ、古代ローマ建築を代表する石材として知られ、コロッセオやサン・ピエトロ大聖堂などに使用されています。

コロッセオ


コロッセオのトラバーチンについての解説があります。

参考サイト様
公式サイトにも「外部ファサード(高さ48.50メートル)はトラバーチンで作られている」と記載があります。

公式サイト

大理石(マーブル)

カッラーラ大理石
カッラーラ大理石(Carrara Marble)は、トスカーナ州カッラーラで採れる世界的に有名な白色大理石です。

古代ローマ時代から採掘され、建築や彫刻に広く利用され、フィレンツェ大聖堂やシエナ大聖堂の外装にも用いられています。

代表例: フィレンツェ大聖堂(サンタ・マリア・デル・フィオーレ)、ミラノ大聖堂

フィレンツェ大聖堂


フィレンツェ大聖堂にカッラーラ大理石が使われていることが記載されています。

参考サイト様

砂岩

ピエトラ・セレナ
ピエトラ・セレナ(Pietra Serena)は、フィレンツェ周辺で採れる青灰色の砂岩です。

ルネサンス建築を代表する石材で、柱やアーチ、階段などの建築部材によく使用され、パッツィ家礼拝堂やサン・ロレンツォ聖堂で有名です。

サン・ロレンツォ聖堂


こちらのサイト様
に、サン・ロレンツォ聖堂やパッツィ家礼拝堂で使われていると解説されています。

火山岩

ペペリーノ
ペペリーノ(Peperino)は、ローマ近郊のラツィオ州で採れる灰色の火山岩です。

古代ローマ時代から城壁や橋、建築物の構造材として利用され、耐候性に優れており、ローマ周辺の歴史的建築で広く見ることができます。

Author:Sailko CC BY 3.0

ヴィテルボのサン・ペレグリーノ教会


ペペリーノは古く重厚なためか、あまり建造物では見当たりませんでしたが、

こちらの参考サイト様
で、解説されています。

イギリスの壁の石材

イギリスは、淡い蜂蜜色の石灰岩や灰色の砂岩が代表的な建築石材です。

耐候性に優れ、湿潤な気候の中でも長期間美しさを保つことができ、中世の教会や城からジョージアン建築まで、幅広い時代の建築に使用されています。

石灰岩

ポートランド・ストーン
ポートランド・ストーン(Portland Stone)「ポートランド石灰岩」は、ドーセット州ポートランド島で採れるジュラ紀の石灰岩です。

緻密で耐久性に優れ、17世紀以降イギリスを代表する建築石材となりました。

セント・ポール大聖堂


バッキンガム宮殿


大英博物館


セント・ポール大聖堂やバッキンガム宮殿、大英博物館などに使用されています。

参考リンク

バース・ストーン
バース・ストーン(Bath Stone)は、サマセット州バース周辺で採れる蜂蜜色の石灰岩です。

加工しやすく、美しい色合いからジョージアン建築を代表する石材となり、ロイヤル・クレセントや市内の歴史的建築群に、プロジェクトとして広く使われています。

バース歴史地区


ロイヤル・クレセント


バース寺院


ロイヤル・クレセントなど、ジョージアン様式のテラスハウスが並ぶ歴史的建築群です。

同じく歴史地区内にある元修道院のバース寺院(パーペンディキュラーゴシック様式)にも、バース石が使われていることで有名です。


パルテニー橋と聖マイケル教会(尖塔)と、ギルドホール(ドーム)です。

パルテニー橋とギルドホールはバース石が使われている情報が確認出来ましたが、聖マイケル教会は石灰石が使われているまでは情報はいくつもありましたが、確実にバース石が使われている情報は見つかりませんでした。

パルテニー橋 ギルドホール

パーベック・ストーン
パーベック・ストーン(Purbeck Stone)は、ドーセット州パーベック半島で採れる石灰岩です。

磨くと大理石のような光沢が出ることから、パーベック大理石とも呼ばれています。

ローマ時代から採石され、中世には教会や大聖堂の建築・装飾材として広く利用され、ソールズベリー大聖堂やカンタベリー大聖堂などで見ることができます。

参考リンク

ソールズベリー大聖堂


ソールズベリー大聖堂の公式サイト
にて解説されています。

Author:Derbrauni CC BY-SA 4.0


スワネージの聖マリア教会は、

こちらのサイト様
にて解説されています。

アンカスター・ストーン
アンカスター・ストーン(Ancaster Stone)は、リンカンシャー州で採れるウーライト質石灰岩です。

中世から教会や大聖堂、貴族の館に使用され、彫刻性にも優れていて、ノーリッジ大聖堂やウォラトン・ホール(カントリーハウス)などで使用されています。

参考リンク参考サイト様

ウォラトン・ホール


砂岩

ヨークストーン
ヨークストーン(Yorkstone)は、ヨークシャー地方で採れる細粒砂岩です。

耐摩耗性が高く、建物の外壁や舗装、階段などに古くから利用され、イングランド北部のカークストール修道院はじめ、教会や歴史的建築で使われています。

参考サイト様

カークストール修道院


石壁の工法と技術の名称

それでは、お城や教会などの壁に使われる、石積みの工法(メイソンリー 「Masonry」)や、技術の名称を見ていきましょう。


石積みは、そのまま積み上げる(乾式石積み「ドライストーン」)と、モルタルで固める方法があります。

ドライストーンは、アルベロベッロのトゥルッリなどが有名です。

アシュラー(切り石積み)


まず、外壁に使われる石の基本はアシュラーです。

アシュラー、またはその工法であるアシュラー・メイソンリー(Ashlar Masonry)とは、特定の形状(通常は長方形や正方形)に合わせて切断・加工された「切り石」や、その石を用いて積まれた石積みの建造物、およびその技法を言います。

Ashlar
ほとんどの城や教会の外壁に使われます。

ラブル(野面積み)

ラブル(Rubble)またはその工法であるラブル・メイソンリー「野面積み(のづらづみ)」は、不規則な形状の石をほとんど加工せず積み上げる石材・石積みで、フィールドストーン(野面石)がよく使われます。

自然石や粗く割ったままの不規則な形状の石を組み合わせる工法で、古城の城壁や防御施設、田舎の民家などに用いられました。

ポリゴナル(多角形石積み)

ポリゴナル・メイソンリー(Polygonal Masonry)「多角形石積み」は、多角形に加工した石材を隙間なく組み合わせて積み上げる石積み工法です。

石の形や大きさは一つひとつ異なりますが、精密に加工されているため高い強度と耐久性を備えており、古代ギリシャや古代ローマ、インカ帝国の城壁や神殿などで広く用いられました。

Polygonal Masonry

ルスティカ(粗面積み)

粗面積み(Rustication)は、石材の見える側だけを自然なままか荒くした状態で、ブロックのつなぎ目がわかるように加工した状態にしたブロックを積み上げる古典主義建築の技法です。

イタリア・ルネサンスから広まっていった技法で、
  • メディチ・リッカルディ宮
  • ピッティ宮殿
などが有名です。

ルスティカ

ピッティ宮殿


クォイン(コーナーストーン)

クォイン(Quoin)「コーナーストーン」は、建物の四隅に配置される大型の切石です。

建物の強度を高めるとともに、外観のアクセントとしても重要な役割を果たし、城や教会、大聖堂で非常によく見られる建築要素です。

Quoin


ソー城は、とても綺麗なクォインで飾られています。

Château de Sceaux
にて、

「built in brick with stone quoins, designed to evoke the Louis XIII style」

と、解説されています。


こちらは、ドゥーン城のクォインです。

ドゥーン城
にて、「大部分は粗石積み、隅には飾り石」と解説されています。

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