ゴシック大聖堂の特徴と成り立ち【ゴシック教会建築】

西洋文化に詳しい王女『ロゼリィ』が解説する『西洋史』

今回は、ゴシック大聖堂について解説していきます。


いよいよゴシック大聖堂ですか。


ドイツ北部やポーランドなどに見られる少し特殊なブリックゴシック教会(レンガゴシック教会)などは、

こちらの記事
にて紹介していますが、今回はフランスなどを中心にしたゴシック大聖堂についてです。

ゴシック大聖堂の誕生と発展

パシリカ様式との関係

ゴシック大聖堂は、カトリックの教会建築であるパシリカ様式と密接に関係していて、内部的にはそれまでの教会様式であるパシリカ様式を引き継ぎ、発展していくことになります。

そのため、同じく
  • 身廊
  • 側廊
  • 高窓(クリアストーリー)
  • 後陣(アプス)
などが存在します。

パシリカ様式については、

こちらの記事
にて詳しく解説しています。

ロマネスク様式からの発展


1140年のサン=ドニ大聖堂の改修

サン=ドニ大聖堂


ゴシック大聖堂は、1140年頃、現在のフランス・パリ近郊にあるサン=ドニ大聖堂の改築から始まったとされています。

ゴシック建築は、キリスト教の思想から、天の光に届くような高い構造物を取り入れられました。

ゴシック大聖堂建築の特徴

ゴシック様式は、天上の光を神の存在の象徴として捉え、人々の精神を神聖な領域へ導くというキリスト教的世界観を、大聖堂の垂直性と光に満ちた空間によって表現するという思想が、ゴシック建築の重要な背景と考え方です。

以下、バシリカ教会様式や、ロマネスク建築様式から、ゴシック大聖堂として発展した特徴と内容です。

ゴシック大聖堂の構造の特徴

尖頭アーチ

ルーアン大聖堂


尖頭アーチ (Pointed Arch)は、ゴシックアーチとも呼ばれ、アーチの頂点が尖った形状になっていて、ゴシック建築を代表する構造です。

リブ・ヴォールト

ルーアン大聖堂


交差するアーチ状の「リブ(肋骨)」で天井を支える構造です。

  • 四分ヴォールト
  • 六分ヴォールト
  • 星形ヴォールト
  • 網状ヴォールト
  • 扇形ヴォールト
  • 放射状ヴォールト
  • ペンダントヴォールト

などがあります。

ヴォールトについては

こちらの記事
に解説しています。

束ね柱(クラスターピア)

アミアン大聖堂


ロマネスク〜初期ゴシックの複合柱(Compound pier)から、束ね柱(Cluster pier)へと発展しました。

リブ・ヴォールトのリブがそのまま柱へ流れ込む構造になっています。

参考リンク

トリフォリウム

パリ・ノートルダム大聖堂


身廊と高窓の間に設けられた細い通路や装飾アーケードです。

通常はギャラリー(トリビューン)の上に設置され、3階目の位置になりますが、トリビューンより狭い通路です。

ギャラリーはロマネスクでも存在しましたが、トリフォリウムはゴシック期あたりから登場しました。

参考リンク

4層構成と3層構成(4層式と3層式)

4層式(初期ゴシック)
4層式は、初期のゴシック建築(12世紀後半など)によく見られる構成で、壁の強度を保ちつつ高さを出すために、4つの階層を積み上げました。

アーケード(第1層) 身廊と側廊を仕切る一番下の大きな柱とアーチの列
ギャラリー(第2層) 側廊の真上にある人が通れる広い2階の回廊スペース(トリビューンともいう)
トリフォリウム(第3層) ギャラリーと高窓の間に挟まれた奥行きの浅い狭い通路
クリアストリー(第4層) 一番高い位置にある外光を取り入れるための窓の層

代表例:ノワイヨン大聖堂、ラン大聖堂

3層式(盛期ゴシック)
12世紀末から13世紀の盛期ゴシックになるとフライングバットレスが完成し、外側から壁を支えられるようになったため、第2層の「ギャラリー」が不要になり、3層へと簡素化・洗練されました。

アーケード(第1層) 一番下の土台となるアーチ列
トリフォリウム(第2層) ギャラリーがなくなりアーケードのすぐ上にトリフォリウムを配置
クリアストリー(第3層) ギャラリーの分のスペースが空いたため窓を大きく下に広げることが可能

※代表例:シャルトル大聖堂、ランス大聖堂、アミアン大聖堂

フライング・バットレス

ウルム大聖堂


身廊の外側から壁を支える半アーチ状の控え壁です。

ゴシック大聖堂の採光や開口部の特徴

ステンドグラス

サント・シャペル


色ガラスを鉛で組み合わせて作る装飾窓で、光を幻想的に演出し、ゴシック建築の象徴となっています。

バラ窓

パリ・ノートルダム大聖堂


放射状の模様を持つ巨大な円形のステンドグラスで、西正面や翼廊のファサード中央によく設けられました。

トレーサリー

トルトサ大聖堂


窓やバラ窓に施される石造の装飾格子です。
円や三つ葉形(トレフォイル)、四つ葉形(クワトレフォイル)などの模様を構成します。

ゴシック大聖堂の内部設備の特徴

ルードスクリーン

リポン大聖堂


身廊と内陣(聖歌隊席・祭壇)を仕切る装飾的なスクリーンで、中世の典礼において聖職者と信徒の空間を区別する役割を果たしました。

上部には十字架(ルード)やキリスト像が置かれることが多く、イングランドのゴシック大聖堂で特に発達しました。

サンテティエンヌ・デュ・モン教会


聖歌隊席(クワイアストール)

内陣に設けられた聖職者や修道士のための木製の座席で、典礼や聖務日課に用いられました。

ゴシック時代には精巧な木彫装飾やミゼリコルドを備えた豪華な造りへと発展し、イングランドをはじめヨーロッパ各地の大聖堂で優れた作品が制作されました。

レレドス

祭壇の背後に設けられる装飾壁で、石や木による精巧な彫刻や聖人像、祭壇画などで華麗に飾られます。

ゴシック時代には祭壇の重要性を強調するために大型化・豪華化し、大聖堂内部を代表する装飾要素となりました。


ゴシック大聖堂の装飾の特徴

フィニアル

バーゼル大聖堂


尖塔やピナクルの先端に付く葉やつぼみを模した装飾で、ゴシック建築らしい垂直で繊細なシルエットを生み出します。

ピナクル

ミラノ大聖堂


控え壁や建物の角に立つ細長い小尖塔で、装飾だけでなく、重りとして控え壁を安定させる役割もあり、先端にはフィニアルが付くことが一般的です。

クロケット

サンタ・エウラリア大聖堂


フィニアルやピナクルの縁に連続して付く、外側へ巻くような葉形の装飾で、尖塔をより華やかで立体的に見せる役割があります。

ゴシック大聖堂の彫刻の特徴

ガーゴイル

ポワティエ大聖堂


雨どいを兼ねた怪物形の石像で、口から雨水を排出し、建物の壁を雨水から守り、悪霊を追い払う魔除けの意味も持っています。

キマイラ

パリ・ノートルダム大聖堂


怪物を表現した装飾彫刻で、雨どいの機能はありませんが、塔や欄干などに置かれ、建物を見守るように配置されます。

側柱像

パリ・ノートルダム大聖堂


なかなか日本語訳では見ませんが、側柱像と訳しました。

ポータルの両脇の柱に立つ細長い聖人像です。

ロマネスク大聖堂から発展していきました。

Jamb Statue

またこれらのゴシック大聖堂の建築要素は、後に近世以降に城の要素として取り入れられているので、

こちらの記事
も合わせてみると面白いです。

ゴシック大聖堂の国別の特徴

フランス式のゴシック大聖堂の特徴

高さ重視

フランスのゴシック大聖堂は、高さを重視する傾向が高いです。

短い翼廊

アミアン大聖堂


イギリスのゴシック大聖堂と比べて翼廊が短く、横幅の狭い十字となっている場合が多いのが特徴的で、アプスは半円型になっています。

西側の双塔の強調

フランスのゴシック大聖堂は、西側のファサードにある双塔を高くする傾向があります。

ファサードのバラ窓

フランスのゴシック大聖堂はファサードにバラ窓を目立たせるのが特徴ですが、対してイギリス式はそこまで重要ではありませんでした。

リッジベースセル

シャルトル大聖堂


ヴォールトウェブのセルの石またはレンガがリッジに沿います。

イギリス式のゴシック大聖堂の特徴

奥行き重視

イギリスのゴシック大聖堂は、フランスの高さに比べて、長さに重きを置いた造りとなっています。

全長の最長はウィンチェスター大聖堂の170mです。

中央塔の発達

イギリス式は、フランス式の双塔よりも、ランタン塔から発展した中央交差部の塔(クロッシングタワー)を高くする傾向があります。

方形シュヴェ

フランス半円型のシュヴェに対して、イギリスのゴシック大聖堂のシュヴェは方形になっています。

リッジリブ

フランスのゴシック大聖堂は必須ではないですが、イギリス式のゴシック大聖堂はリッジリブを用いることで特徴的です。

ノルマン様式 + ゴシック様式

イギリスの中でイングランド地方では、「ノルマン様式(フランスのノルマンディーから広まったロマネスク様式)+ ゴシック様式」の混在の大聖堂が非常に多くあるのも大きな特徴です。

これは、1066年のウィリアム1世によるノルマン征服(ノルマン・コンクエスト)後に、イングランド全土で教会・修道院・大聖堂の大規模な建設が始まり、後にゴシック様式に増築・一部改築が行われたからです。

ドイツ式のゴシック大聖堂の特徴

ハレンキルヒェ

ドイツのゴシック大聖堂は、身廊と側廊が高さの同じハレンキルヒェと呼ばれる形態が、特に後期ゴシックに見られます。

ハレンキルヒェは、トリフォリウムや高窓が存在しません。

イタリア式のゴシック大聖堂の特徴



スペイン式のゴシック大聖堂の特徴

ムデハル様式との融合

スペインのゴシック建築は、フランス・ゴシックを基盤としながらも、イスラム文化の影響を受けたムデハル様式と融合して独自に発展しました。

レンガ造や幾何学模様や彩色タイル、木組み天井などのイスラム建築が取り入れられ、ゴシック後期には華麗な装飾を特徴とするイサベル様式へと発展しました。

代表的なゴシック大聖堂の一覧

それでは、代表的なゴシック大聖堂をみていきましょう。


フランスの有名なゴシック大聖堂

サン=ドニ大聖堂


サン=ドニ大聖堂は、上記で解説したように、ゴシック建築の起点となる大聖堂です。


3層構成になっています。
  • アーケード
  • トリフォリウム
  • クリアストーリー

パリ・ノートルダム大聖堂


ノートルダム大聖堂は、ゴシック建築の教科書的存在と言われています。

シャルトル大聖堂


シャルトル大聖堂は、初期ゴシックの完成形といわれ、ステンドグラスが象徴的です。


3層構造になっています。
  • アーケード
  • トリフォリウム(四連式)
  • 高窓(二連窓)

アミアン大聖堂


アミアン大聖堂は、フランス盛期ゴシックの最大傑作とされています。


身廊は、3層構造です。
  • アーケード
  • トリフォリウム(2連トリフォラ)
  • クリアストーリー(4連窓)

ルーアン大聖堂


フランス・ノルマンディー地方の代表的ゴシック大聖堂で、フランボワイヤン式で有名です。

ランス大聖堂


ランス大聖堂は、王の戴冠式の大聖堂で、ファサード彫刻が有名です。

ラン大聖堂


初期ゴシック建築の最高傑作です。


4層構造になっています。
  • アーケード
  • トリビューン(ビフォラ)
  • トリフォリウム(三連式)
  • 高窓

イギリスの有名な大聖堂

ソールズベリー大聖堂


ソールズベリー大聖堂は、イギリス初期ゴシックの典型です。

ヨーク・ミンスター


ヨーク・ミンスターは、英国最大級のゴシック大聖堂です。

ドイツの有名なゴシック大聖堂

ケルン大聖堂


ケルン大聖堂は、ドイツゴシック最大規模で尖塔の象徴的です。

ウルム大聖堂


世界一高い教会尖塔を持つ、ドイツ後期ゴシックの完成形です。

イタリアの有名なゴシック大聖堂

ミラノ大聖堂


ミラノ大聖堂は、後期ゴシックの代表作です。

スペインの有名なゴシック大聖堂

スペインのゴシック大聖堂は、フランスと同じくアプスが半円型になっています。

ブルゴス大聖堂


ブルゴス大聖堂は、スペインゴシックの代表的大聖堂です。


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