【薔薇の起源と歴史】オールドローズからモダンローズへの流れ【西洋薔薇史】

西洋文化に詳しい王女『ロゼリィ』が解説する『西洋史』

Moeちゃん、今回は薔薇の品種についてです。


いよいよです。


バラの野生種(原種)は約100〜150種が確認されており、それらが自然交雑を繰り返すことで多様な系統が生まれました。

さらに、人為的な交配によって、現在では3万種〜4万以上の園芸品種が作出されています。


そんなにあるのですか?覚えられないです…


まずは有名な品種とその流れを知っていきましょう。


園芸品種の中で、最も品種改良や交配が盛んで品種数が多いのはこのバラで、その次にランやキクと言われています。

薔薇の起源

バラ属の起源は古く、化石記録から約3,000万〜4,000万年前には北半球に存在していたと考えられています。


古代のメソポタミアやエジプト、ペルシアでは、バラは香料や薬、儀式用の植物として用いられました。

特に古代ペルシアではバラの栽培が発展し、ローズウォーターやローズオイルの製造技術が確立されたと考えられています。

一説には、『ギルガメッシュ叙事詩』には「永遠の命」として薔薇を挙げられる逸話も囁かれたりしていますが、それがバラであるという確かな記述はないようです。

古代における薔薇

古代の薔薇と文化

宗教における薔薇

古代ギリシャでは、バラは愛と美の女神アフロディーテの花とされました。

そのため薔薇は、
  • 情熱
  • 儚さ
などの象徴となりました。

権力としての薔薇

古代ローマでは、バラは富と権力の象徴でした。


詩人のサッフォーは、バラを「花の女王」と称えたことで知られています。

クレオパトラ7世は、バラの香りを好んだことで有名で、伝説によれば、恋人のマルクス・アントニウスを迎える際、部屋の床をバラの花びらで埋め尽くしたと伝えられています。

ローマ皇帝のネロやヘリオガバルスも薔薇の愛好家で、豪華な宴会を開き、天井から大量のバラの花びらを降らせたという逸話が残っています。

これが現代の薔薇のイメージの原点になるわけなのですね。


そしてこの頃からすでに、薔薇は香油や薬として用いたりする習慣も広まっていました。


古代の代表的な薔薇の品種(野生種)

ロサ・ガリカ(ヨーロッパ中心)


ロサ・ガリカは、一番先祖の薔薇とも言われています。

古代ローマ時代、現在のフランス一帯をガリアと呼ばれていたことから名付けられました。

ロサ・ガリカは、紀元前12世紀には存在していたとされ、西アジアから南ヨーロッパにかけて自生していました。

参考文献

ロサ・ガリカを祖先として発展した園芸系統が「ガリカローズ」です。


ロサ・フェニキア(中東周辺)

フランスを含む西ヨーロッパ周辺ではロサ・ガリカが広く分布していたのに対し、中東、特に東地中海沿岸のフェニキア地方では、ロサ・フェニキアが自生していました。

ロサ・フェニキアは後にロサ・ガリカと自然交雑により、ロサ・カニーナやロサ・ダマスケナを生み出しました。

今でも栽培されています。

姫野ばら園八ヶ岳農場

ロサ・モスカータ(西アジア周辺)


ロサ・モスカータは、西ヒマラヤから中東にかけての西アジア地域にかけて自生していました。

ロサ・モスカータは後にロサ・ガリカとの自然交雑により、ロサ・ダマスケナ・ビフェラを生み出しました。

(日本のノイバラ)

少しヨーロッパとは離れますが、日本ではノイバラが自生していました。


元々有棘の低木類のバラを茨(いばら)と呼んでいて、野生であることから「野」がついてノイバラとなったと考えられています。

別名ノバラ(野バラ)とも呼ばれ、日本のバラの代表的な原種であり、万葉集にも登場しています。

ノイバラ、野バラ、茨、そういう関係性だったのですね。


中世における薔薇

中世の薔薇と文化

宗教における薔薇

中世になると、修道院がバラ栽培の中心となります。

バラは観賞用というよりも、薬草として重要視されました。

キリスト教では、
  • 赤いバラ:キリストの受難や愛
  • 白いバラ:聖母マリアの純潔
を象徴するようになります。

ロザリオ(Rosary)という言葉は、ラテン語の「バラの冠(rosarium)」に由来するとされています。

権力としての薔薇

15世紀の薔薇戦争では、赤バラと白バラが王家の紋章として使われ、バラは政治的な象徴にもなりました。

イングランドの王位継承をめぐる内戦である薔薇戦争は、
  • ランカスター家:赤いバラ
  • ヨーク家:白いバラ(アルバ・ローズ)
と、それぞれの家紋にバラが用いられたことから、この名で呼ばれています。

中世の代表的な薔薇の品種

ロサ・ダマスケナ(サマー・ダマスク)


これらが、ダマスク・ローズと言われる系統の始まりです。


ダマスク・ローズですか。


ロサ・ダマスケナ・ビフェラ

オータム・ダマスクとも言われます。

ロサ・ダマスケナの中でも、返り咲き性をもつ品種です。

ロサ・アルバ

古代から存在した説もありますが、中世のヨーク家の紋章に使われたりしました。

実際に栽培され始めたのはルネサンスくらいからとされています。

Wikipedia

近世における薔薇

近世の薔薇と文化

権力としての薔薇

この時代のバラは、中世の薬用・宗教的な存在から、観賞価値を重視する園芸植物へと大きく変化しました。

ルネサンス以降、ヨーロッパでは植物学や園芸学が発展し、各地で珍しい植物を収集する文化が広まり、特にフランスやオランダ、イギリスでは、王侯貴族が競って庭園を整備し、バラの栽培が盛んになりました。

また、上記の薔薇戦争を経て成立したチューダー朝は、ランカスター家の赤バラとヨーク家の白バラを組み合わせた「チューダーローズ」を王朝の紋章として採用しました。

チューダーローズを使ったデザイン


近世の代表的な薔薇の品種

ケンティフォリアローズ

ロサ・ケンティフォリア


ロサ・ケンティフォリアとその系統の総称です。

ムスクローズ

ロサ・モスカータ


ムスクローズは、ロサ・モスカータとその系統の総称です。

近代における薔薇

薔薇の革命

中国種の到来(チャイナローズ)

この頃、中国からの薔薇「チャイナローズ」が、ヨーロッパの一季咲きバラにはなかった四季咲き性をもたらしました。

これが、のちの
  • ブルボンローズ
  • ノワゼットローズ
  • ティーローズ
  • ハイブリッド・パーペチュアル
  • ハイブリッド・ティー
への四季性の薔薇へと繋がっていきます。

ロサ・キネンシス(中国)

ロサ・ギガンテア(中国)


オールドローズからモダンローズへ

1867年に作出された品種であるラ・フランスは、フランスの育種家であるジャン=バティスト・ギヨーによって作出されました。

この品種は、それまでのバラにはなかった特徴を兼ね備えていました。

  • 四季咲き性が強い
  • 高芯咲きの優美な花形
  • ティーローズの香り
  • 大輪で切り花向き
  • 繰り返し開花する

ラ・フランスの登場によって、「香りや風情を楽しむ古典的なバラ」から、「花形や四季咲き性を重視する現代的なバラ」へと育種の方向性が大きく変わったのです。

それを機に、バラの世界では、大きくオールドローズとモダンローズに分類されました。


オールドローズ(1867年以前)
1867年以前に存在していた系統のバラの総称です。

野生種や古くから栽培されてきた園芸品種をもとに発展しました。

  • 香りが非常に豊か
  • 柔らかな花色が多い
  • ロゼット咲きやカップ咲きが多い
  • 病害虫に強い品種が多い
  • 一季咲きが中心
などの特徴があります。

モダンローズ(1867年以降)
モダンローズは、1867年以降に作出されたバラの総称です。

ラ・フランスの登場により、四季咲き性と整った花形を備えたバラの育種が進みました。

モダンローズは、
  • 四季咲き性が強い
  • 花色が豊富
  • 高芯咲きが多い
  • 切り花に向く
  • 花付きがよい
のような特徴があります。

近代の代表的な薔薇の品種(1867年以前)

ポートランドローズ(P)

ポートランドローズは、ダマスク系とチャイナローズの交雑から生まれたとされています。

この系統の品種は、
  • ローズ・デュ・ロワ
  • コント・ドゥ・シャンボール
などがあります。


ブルボンローズ(B)

ブルボンローズは、ダマスク系とチャイナローズとの交雑と考えられています。

ブルボンローズの主な品種は、
  • スヴニール・ドゥ・ラ・マルメゾン
  • スヴニール・ドゥ・セント・アンズ
  • ブルボン・クイーン
  • レーヌ・ヴィクトリア
などがあります。

ノワゼットローズ(N)

ノワゼットローズは、ロサ・モスカータとチャイナローズの交雑から生まれました。

ノワゼットローズの主な品種は、
  • シャンプニーズ・ピンク・クラスター
  • ブラッシュ・ノワゼット
  • レーヴ・ドール
  • エメ・ヴィベール
などがあります。

ティーローズ(T)

ティーローズは、ノワゼットローズやブルボンローズに、チャイナローズを交雑して生まれました。

主な品種は、
  • アダム
  • サフラノ
  • ペルル・デ・ジャルダン
  • デュセス・ドゥ・ブラバン
などがあります。

モスローズ(M)

モスローズは、ケンティフォリアローズの枝変わりから生まれたと考えられています。

主な品種は、
  • コモン・モス
  • アンリ・マルタン
  • サレ
などがあります。

ハイブリッド・パーぺチュアル(HP)

後述のハイブリッド・ティーの直接的な祖先で、オールドローズの中では品種も一番多いとされています。

上記の近代の薔薇を繰り返し交配した品種の系統です。

有名な品種は、
  • ラ・レーヌ
  • ジェネラル・ジャックミノ
  • プリンス・カミーユ・ド・ロアン
  • ポール・ネイロン
などがあります。

モダンローズ(1867年以降)

ハイブリッド・ティー(HT)

ハイブリッド・パーペチュアル種とティーローズ種を交配して誕生。大輪・一枝一輪咲き。

ラ・フランス(1867年)


ピース(1945年)


フロリバンダ(F・FL)

アイスバーグ(1958年)


グランディフローラ(Gr)

ハイブリッド・ティーとフロリバンダの交配種。大輪で見事な花を咲かせます

クイーン・エリザベス(1954年)


イングリッシュローズ(ER)

四季咲き、花持ちがよいモダンローズは、香りが弱い品種が多いという課題もありました。

そこでイギリスの育種家デビッド・オースチンは、オールドローズの美しさと香りに、モダンローーズの四季咲き性や耐病性を組み合わせ、1961年にイングリッシュローズとして誕生させました。

イングリッシュローズの多くは、自然な低木状に育つシュラブローズですが、品種によっては、ブッシュ状や半つる性、クライミング性などの樹形があります。

コンスタンス・スプライ(1961年)

Author:Rosa Staropramen CC BY-SA 3.0


デビッド・オースチンが発表した、最初のイングリッシュローズです。

ただし、この品種は一季咲きで、四季咲きではなく、オールドローーズの美しさとモダンローーズの四季咲き性を完全に両立したわけではありませんでした。

よって、以下の品種改良が行われていきました。

グラハム・トーマス(1983年)


ガートルード・ジェキル(1986年)


メアリー・ローズ(1983年)


というわけで、まだまだ一部ですが、流れとしてはこんな感じになります。


頑張って3万種覚えるのです。


覚えるのですか?頑張ってください…



参考資料薔薇の系統

[カテゴリ]

Copyright© 2024-2026 rose-fille.com All Rights Reserbed.

当サイトに掲載している文章、画像などの無断転載を禁止いたします。