【テラス装飾】バラスター(バラストレード)の歴史と様式【欄干】

西洋文化に詳しい王女『ロゼリィ』が解説する『西洋史』

王女様、ヨーロッパや洋風のバラスターは様々なデザインがありますが、これも様式によってですか?


はい。バラスターにもヨーロッパの建築の様式が絡んできます。


ちなみにゴシック期にもバラスターはあったのですか?あまり見ないようですが…


では今回は、ゴシック期を含むバラスターの考え方について見ていきましょう。


はい!


バラスターの由来と構成

それではまずバラスターの基本と構造を知っておきましょう。


バラスターとバラストレード

バラスター(手すり子)とは?


バラスター「Baluster」は、日本語で「手すり子」といい、手すり(バラストレード)を支える垂直な柱状の部材のことです。

基本的には、このように真ん中に膨らむがあって、上下に土台なようなものがあります。

詳しくは後述の構造の章で解説します。


バラストレード(手すり)とは?


バラストレード「balustrade」とは、階段、バルコニー、テラスなどの縁に設置される手すりのことです。

手すりは、狭義では柵上の欄干などの上に渡した手でつかむ横木(笠木)を指しますが、広義では柵状のもの(手すり子)も含めて構造全体を指し、このバラストレードは後者の広義の方を言います。

手すりの狭義と広義
また、欄干(らんかん)とも訳され場合がありますが、欄干は後述のパラペットも含むので、ここでは手すりとします。

なるほど、バラストレードにあたるこれといった日本語がないのですね。


バラスターの由来

バラスターの名前の由来はザクロ?

バラスターの名前の由来は、ラテン語のbalaustiumや、古代ギリシャ語の「ザクロの花」から来ています。

参考リンク

ざくろの花、ですか?


バラスターの形の由来

ザクロの花の形状から

こちらがザクロの花です。


確かに!これは似ていますね!


このように、名前はザクロの花から取られたのは事実とされていますが、形状は当時の古代ギリシャや古代ローマの文化として流行していたアンフォラなどの壺から来ているとも受け取られます。

古代ギリシャやローマの壺型から?
F.S.マイヤーとラギュネの本

こちらは、

Wikipedia
にある、産業工芸家のフランツ・ザレス・マイヤーのデザインブックの1ページですが、明らかに壺をイメージしたデザインがあり、裏付けになる一つの要素と見ることもできます。

フランツ・ザレス・マイヤー
ただ、詳しい説明書きはされていません。

この資料の説明書きの詳細は、こちらから見ることができます。

なんと?!


見てみると、このように書かれています。


原文
「The Balauster. (Plate 138.)
Balausters are small squat columns of circular or square planSometimes they are only symmetrical around their axis, sometimes however they are also symmetrical in an upward and downward direction. In most cases their construction is that of the candelabrum. They may be divided into base, shaft, and capital.
Ranged side-by- side in a row, balausters are employed by the Renascence and modern art in Parapets, Balconies, Attics, and Staircases. When the Balausters are placed on a Stair-case: the bases and capitals are either slanting, or the horizontals of the Balausters follow the slanting lines of the stair-case. The latter method was adopted in the Decadence of the Renascence, but is unjustifiable; and can, in any case, only be adopted with Balausters of a square or oblong plan. A rich variety may be obtained by the use of square and cylindrical forms in the same Balauster (fig. 5). The Balauster is occasionally used as a support for Stalls, and on Furniture. Raguenet's "Documents et Materiaux" contains a large number of Balausters; from which we have selected some examples.」

和訳
「バラスト(図版138)
バラストとは円形または正方形の断面を持つ小柄な柱である。軸方向のみ対称な場合もあれば、上下方向に対称な場合もある。構造はほとんどの場合燭台と同様で、基部・柱身・柱頭に分かれる。
欄干、バルコニー、屋根裏部屋、階段の手すりとして、ルネサンス期および近代美術において、手すり子(バラスター)は一列に並べて用いられる。階段に設置する場合、基部と柱頭部は傾斜するか、あるいは手すり子の水平線が階段の傾斜線に沿う。後者の手法はルネサンス衰退期に採用されたが、正当化できず、いずれにせよ正方形または長方形の平面を持つ欄干柱でのみ採用可能である。同一の欄干柱に角形と円柱形を併用することで豊かな変化が得られる(図5)。欄干柱は時折、礼拝席の支柱や家具にも用いられる。ラギュネの『文獻と材料』には多数の欄干柱が収録されており、そこからいくつかの例を選んだ。」

(図版138)というのは上記の画像のことです。


図版の説明書きは、以下のように書かれています。
「The Balauster. — The Teiminus. 225
Plate 138. The Balauster.
1. Square plan, Italian Renascence, Sta. Maria della Salute, Venice.
2. A system of square Balausters, Palazzo Pesaro, Venice.
3. Circular plan, Modern Italian.
4. Wood, Italian Eenascence, stalls in Sta. Maria Novella, Florence.
5. Modem French, Architect Roux, Paris.
6 — 7. Square wooden, (Bethke: "Der decorative Holzbauer"). 8 — 9. Modern, terracotta」

和訳は以下です。
「バラスター。 — テイミヌス。 225
図版138. バラスター。
1. 正方形平面、イタリア・ルネサンス、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会、ヴェネツィア。
2. 正方形バロスター群、ペザーロ宮殿、ヴェネツィア。
3. 円形平面、近代イタリア様式。
4. 木製、イタリア・ルネサンス様式、フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の聖具室。
5. 近代フランス様式、建築家ルー、パリ。
6 — 7. 木製四角柱(ベトケ著『装飾的木工』)。8 — 9. 近代様式、テラコッタ製。」

よって、4の壺型のイラストは、フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の聖具室にあるルネサンス様式のバラスターだった可能性があります。


なるほど…


よって、詳細は分かりませんが、ルネサンス時代から壺を意識していた可能性は考えられるかもしれません。

ちなみにラギュネはフランスの建築家であるアントニン・ラグネのことで、『文獻と材料』は、

参考リンク
に解説されていて、要約すると、
「1872〜1914年、ラグネはパリのスタジオで建築分類学の大規模プロジェクト『Matériaux et documents d’architecture et de sculpture』を指揮しました。
全500号以上の連載で、ヨーロッパ各地の建物や広場、記念碑や墓地から収集した14,000点以上の装飾イラストを収録しました。
ラグネの装飾観はオスマン期のアパートからベル・エポックの建築までを横断し、印刷技術や写真の普及によって建築要素(窓・柱頭・バルコニーなど)の分類を支援しました。
本プロジェクトは、19世紀末の新しいモダンスタイル出現の文脈で、装飾の役割を理解する手がかりとなります。」
とあります。

アンフォラとレキュトス
では参考までに、古代ギリシャやローマで使われていた壺を見ていきましょう。


アンフォラ


アンフォラは、液体や穀物を保存・輸送するための二つの取っ手付きの細長い壺です。

下部が尖っており立てて置くより地面や土に差して安定させる形状をしています。

アンフォラ

レキュトス


レキュトスは、ワインやオリーブオイルを入れる円筒形の容器で、片方に取っ手がついています。

高さに比べて細長く、注ぎ口がついているのが特徴です。

レキュトス

クラテール


クラテールは、水やワインを希釈して飲むための広口の浅い器で、脚や台座がつくことがあります。

形は低く広がり、安定して置けるデザインです。

クラテール

古代ローマの燭台から
そしてバラスターの形のルーツに最も有力なのは、ローマの燭台です。

それは、

古典建築芸術研究所(ICAA)
で述べられています。

ただ、古代ローマで使われていた

candelabra
では、あまりそのようなザクロ型のような形は見受けられないようです。

装飾柱キャンドルホルダーレトロ燭台飾り
このようなバラスターの形をしたレトロ系燭台は販売されていますが、この形は古代ローマ時代に流行していたかは確認できず、現代での再解釈でデザインされたものの可能性があります。

たしかに、一番バラスターの形に似てはいますね。


バラスターのパーツの名称


バラスターにも、ギリシャ柱のように一応名称はあります。

上記はドイツ語の資料ですが、日本語や英語では以下になります。

バラスターの構成要素と名称

柱頭
柱頭(キャピタル)は、上部の平らな部分です。

手すり(ハンドレール)を支える台座の役割をし、装飾が施されることも多いです。

柱身
柱身(ボディー)は、バラスターの中央の胴体部分です。

壺型や鼓型など形状は様々で、造形の特徴が最も表れる部分です。

特にルネサンス様式のバラスターは丸みがあり、上部や下部、または中央部などにトーラスが見られます。

台座
台座(ベース)は、床や手すりの下地に固定されます。

装飾などで、バラスター全体の安定感を出します。

二重バラスターと対称バラスター

古典建築芸術研究所(ICAA)
によれば、バラスターが縦に並んだ場合、二重バラスターまたは対称バラスターというようです。

対称バラスターはほぼ二重バラスターになっているで、概念的にも重なる部分は多いですが、それぞれ見ていきましょう。

二重バラスター

上下二つが同様な膨らみがあります。

上下対称になっている場合がほとんどです。

対称バラスター

対称バラスターは、上下対称になっているバラスターです。

このように上下対称に配置されています。

バラストレードの構成要素と名称

トップレール

トップレールは、バラストレード最上部の横材です。

手すりとしての機能を持ち、全体の水平線を強調します。

断面には装飾的なモールディングが施されることがあります。

ベースレール

ベースレールは、バラスターを下端で支える横材です。

各バラスターを受けつつ、構造的な安定性を保ち、床との境界を明確にします。

断面には装飾的なモールディングが施されることがあります。

バラストレードにおけるピアとは?

ピアの役割と成り立ち

柱の役割を継承
ピアは、壁状または角柱状の構造体で、ロマネスク建築やゴシック建築においては、アーチやヴォールト、上部構造を支持する役割を果たしてきました。

一方ルネサンス以降に登場するバラストレードに設けられるピアは、その形状や役割は継承しつつも、必ずしも構造の支持を目的とするものではなくなりました。


ピアは、途中階のテラスなど上部に屋根や梁などの構造がある場合には柱として機能します。

しかし屋上のテラスなど上部構造を持たない場合には、バラストレードの区切りとして機能します。

ピアとバラストレードの関係と構造
パレロワイヤルや、騎士団長の宮殿を見ると、柱構造の延長上にバラストレードのピアが存在するのがよく分かります。


フランスのパレ・ロワイヤル


よく見ると、左上と右側ののバラストレードは下階のピラスターの延長上の位置と幅で構成され、左下はキオナスのキャピタルの幅で構成されていて、構造的にも計算されているのが分かります。

なるほどです。ただ闇雲にピアが設置されているわけではないのですね!


構造美ですね。


マルタ島の騎士団長の宮殿


騎士団長の宮殿では、二階部分のピアは柱として機能していて、その柱のピラスター部分の延長上の幅がそのまま屋上のピアの位置と幅として構成されているように見受けられます。

彫刻などでのピアの強調
そして時にはピアは、その上に彫刻などを設置するなど、ペデスタル(Pedestal)の役目ともなり、構成上の節点や視覚的なアクセントとしての役割を果たしています。

フランスのヴェルサイユ宮殿


ドイツのファヴォリテ城


たしかに、ピアを台座として彫刻を設置すると美しいですね!


ピアの構造の名称

では、ピアの構造について見ていきましょう。

参考リンク

ピアキャップ

ピアキャップは、ピアの上端に設けられる部分です。

基本的にはトップレールの延長上に位置しますが、強調して突出される場合もあります。 

また、トップレールに内包される場合もあります。

断面には装飾的なモールディングが施されることがあります。

ピアボディ

ピアの柱身は、よくモールディングがされています。

その他装飾などが施されるときもあります。

ピアベース

ベースレールは、バラスターを下端で支える横材です。

各バラスターを受けつつ、構造的な安定性を保ち、床やパラペットとの境界を明確にします。

段成や簡素なモールディングを伴うことがあります。

ゴシック期のトレーサリーパラペット

トレーサリーパラペットという名称

ゴシック期は、基本的にはバラスター(バラストレード)が誕生する前です。


前ですか?


バラストレードの小柱の連続した欄干に対して、パラペットは壁の延長としての厚い石造の欄干を指し、独立した小柱はなく、主に防御や安全のために設置されたものでした。

それはゴシック様式に限らず、中世の様々な建築物に存在しました。

ゴシック建築では、屋上やテラス、回廊の縁にクワトロフォイルなどのトレーサリー装飾を施すことはありましたが、あくまで構造体の一部としての装飾でした。

そもそもゴシック様式は、教会や大聖堂の建築が多く、テラスといった概念がまだ乏しかったものとも考えられます。

しかし、歴史主義などゴシック様式をイメージしたテラスを理解する際には、この部分の構成や成り立ちを知ることは重要だったりします。

この欄干の名称は、色々探しても見当たらなかったため、ここではトレーサリーパラペットと呼ぶことにします。

このように、ルネサンス以降のように装飾小柱で構成されるバラスターとは性格が異なります。


柱でなく模様ですか。


柱のようなものが存在する場合もありますが、柱が必須の要素ではないため、バラスターではなくパラペットの一種になりそうです。


なるほどです。


トレーサリーパラペットがある建築物

グラナダの王室礼拝堂


グロスター大聖堂


マンチェスター大聖堂


アミアン大聖堂


ブルゴス大聖堂


グレートポントンの聖十字教会

「Wikipedia」Author:Acabashi


バーゼル大聖堂


ルネサンス様式のバラスター

バラスターとバラストレードの誕生

壺型の小柱であるバラスターと、その連続体であるバラストレードは、ルネサンスに誕生しました。

それは、古典(古代ギリシャや古代ローマ)様式の再現を表現する過程で、古代ギリシャの柱を元に、ザクロの花や古代ローマの壺、ローマの燭台などにインスピレーションを受けて取り入れたものと思われます。

またルネサンスは、ビザンツ帝国内のギリシア文化の知識人や学者のイタリアへの流入を機に始まったため、ビザンティン様式の丸みを帯びた装飾の雰囲気から発展した可能性も考えられます。

バラスターが存在する建築物

エステンセ城


イタリアのエステンセ城は、中世様式とルネサンス様式が混在していますが、バラストレードの部分はルネサンス期に造られたものと推測されます。

ボルゲーゼ美術館


現在は美術館になっている、フラミニオ・ポンツィオが建築したルネサンス建築です。

サン・ピエトロ大聖堂


サン・ピエトロ大聖堂のバラストレードは、トップレール、ベースレール共にモールディングがされていて、ピアは内包、または強調され彫刻が置かれています。

バラスターはルネサンスの特徴的な形状で、柱頭が控えめで、柱身は二重トーラスなどで施されています。

シャンボール城


シャンボール城のバラストレードは、上下ほぼ対称ですが、やや捻りがあるようにも見えます。

サン=ジェルマン=アン=レー城


サン=ジェルマン=アン=レー城のバラストレードは、トップレールやベースレールには、幾重にもモールディングがされ、ピアは存在感があります。

バラスターはラウンド形状でトーラスを持ち、上下対称のようにも見えます。

サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂


この大聖堂の建築は早く、4世紀頃とされますが、屋上にバラストレードが見られます。

しかし、度重なる改修や増設がされていて、

こちらのサイト様
によると、
「屋根の縁(ルーフライン)には独立小柱のバラストレードが設けられており、それによって後陣半ドームの鉛覆いが隠されています。
また、そのバラストレードにはローマ出身の彫刻家であるフランチェスコ・ファンチェッリ(1624〜1681)による四体の彫像を載せる台座が組み込まれています。
この一連の彫像は、彼の主要な現存作業とみなされており、ダビデ王と聖ペトロ、聖パオロ、聖ドミニコが表されています。」
とあるため、屋上のバラストレードは、ルネサンス期に増築されたものと思われます。

バロック様式のバラスター

バラスターの形状の変化

バロック期になると、バラスターは丸みが取れ、より古典的なイメージの少し角ばった形状の傾向があります。

バラスターが存在する建築物

ファヴォリテ城


ドイツのファヴォリテ城は、記念モニュメント的に建てられたものですが、バロック様式で造られています。

ニンフェンブルク宮殿


セント・ポール大聖堂


ヴェルサイユ宮殿


ブレナム宮殿


サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂


シェーンブルン宮殿グロリエッテ


マドリード王宮


シャルロッテンブルク宮殿


リバイバル様式のバラスター

近世以降、リバイバル様式に伴い、バラスターも、各種時代の様式の再現がされたりしました。

ルネサンスリバイバルのバラスター

プフィングストベルクのベルヴェデーレ城


こちらはイタリアルネサンスリバイバルの建造物で、バラスターもイタリアルネサンスの特徴を捉えています。

日本の現代におけるバラスター

最後に、現代の洋風住宅におけるバラスターの使われ方について見ていきましょう。


はい!


バラスターは、現代の建築物や、洋風住宅のベランダや屋上、バルコニーなどに活用されています。

公的建築としてのバラスター

迎賓館赤坂離宮


洋風住宅としてのバラスター

バラスターでおすすめの会社

現代の洋風住宅では、バラスターを含む住宅販売や、単体での販売など、様々な場面や形態で用いられています。

百年住宅のバラスター時久商事株式会社のバラスターウィズ・ラボ有限会社のバラスターアートホクストン株式会社のバラスター

形の綺麗なバラスターは?

ということで、バラスターに関する詳しい日本語の資料や情報がほぼ皆無だったので、歴史や様式などから紐解いてみました。


バラスター一つ取ってもとっても奥深いです。


Moeちゃんは、どの形状のバラスターが良かったですか?


ルネサンスの丸みのあるバラスターが良かったです。


ルネサンス、良いですね!


イタリアルネサンスのバラスター

中でも、サン・ピエトロ大聖堂やプフィングストベルクのベルヴェデーレ城のバラスターが綺麗です。


イタリアルネサンスですね。では、プフィングストベルクのベルヴェデーレ城のバラスターを拡大すると…



下から、
クレピドーマにはステレオバテスとスタイロベート、
バーシスにはトーラスとスコティアとアニュレットにアストラガルにアニュレット、
シャフトにはアニュレットにアストラガルにアニュレット、
その上にカヴェットとエキヌスとアバクス

のような構成に見えます。


まるでギリシャ柱、、ですね!

Copyright© 2024-2026 rose-fille.com All Rights Reserbed.

当サイトに掲載している文章、画像などの無断転載を禁止いたします。