ヨーロッパのお城のファサード【西洋の城の美しい正面】

西洋文化に詳しい王女『ロゼリィ』が解説する『西洋史』

それでは王女様、ファサードが有名なお城はありますか?


よく教会建築で聞くファサードですね。


はい。お城にはないのですか?


実はお城には全く無いわけではないですが、概念が異なります。


あまり語られない?お城のファサード

ファサードの意味

建築物の正面と立体的概念

ファサード「Façade」とは、フランス語で「建物の顔」を意味する言葉で、英語の「Face」に近いイメージですが、英語のフェイスはフランス語の「Face」(ファス)に当たります。

そして「Façade」自体も英語化され「Facade」として日常英語としても使われています。

よって建築物に対して、主に建物の主要な正面のことを言われ、特にヨーロッパの建築をはじめ、近現代の建築などでもときおり使われたりします。

またファサードは、
  • 正面ファサード
  • 側面ファサード
など、正面以外にも使われる場合もあり、建物を顔として見せる立面のこととして使われたりします。

教会におけるファサードと価値観

ゴシック大聖堂と宗教的理由

ヨーロッパの教会や大聖堂には、ファサードという言葉をよく聞きます。

教会建築については、

こちらの記事
に解説しています。

ゴシック大聖堂は、特に宗教的な面などから、様々な装飾等がされ、
  • 彫刻
  • ポータル(ティンパヌムを含む扉構成)
  • ローズウィンドウ
など正面も見栄えがあり、また教会建築として西側入口として象徴的に強調されているのも一つの理由です。

サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂のファサード


城におけるファサードと重要性の変化

中世要塞の城のファサード

対して城は、そもそも中世要塞がルーツでした。

要塞は、防御性能が最優先された建築のため、ファサード(象徴的・装飾的な正面)という概念はほとんど存在しませんでした。

お城の歴史については

こちらの記事
で解説しています。

要塞には特に美しい正面玄関は必要ないですね。


確かに。目立ってしまうと一気に侵入されちゃうのです…


このため中世要塞の正面は、建造美的なファサードではなく、防衛としてのゲートハウス(城門)でした。

ビューマリス城の城門


ゲートハウスにはポートカリスなどがありましたね。


また違った意味で色々と工夫がされていました。


そして近世になると…


近世の城のファサード

上記のリンク記事で解説したように、初期の近世の城は次第に純粋な要塞から、居住や権威表象を伴う城館へと変化していきました。

しかし、これらの城であっても多くは要塞起源の建築であり防衛性も備えていたりし、大聖堂のような
  • 神学的象徴
  • 聖書的彫像
  • 強い垂直性
  • 象徴的構成
といった宗教建築レベルのファサード表現にまでは至らない場合がほとんどでした。

ショーモン城の入口


たしかにまだまだ中世の色を残していますね。


しかし、中でも、
  • 左右対称の配置
  • 古典建築の要素
  • 装飾的窓枠
など、一定の「正面性」を意識した城も現れました。

ルネサンスやバロックの特徴ですね。


はい。具体的なお城は後述します。


歴史主義の城のファサード

しかし、19世紀の歴史主義様式での自由なロマン主義思考な城や、ゴシック教会建築を取り入れた城などは、
  • 教会建築の装飾
  • 象徴性を前面に出した正面
  • 視覚的インパクトを重視した構成
など、「見せるための城」として目立つファサードを取り入れた可能性があります。

なるほどです。


それでは今回は、その辺りのお城を見ていきましょう。


はい!


美しい城のファサードを紹介

近世の城の美しいファサード

シャンボール城


ヴォー=ル=ヴィコント城


ヴァルチツェ城


歴史主義の城の美しいファサード

シュヴェリーン城


レドニツェ城


フルボカー城


リンダーホーフ城


ファサード映えのお城の要素

正面中央の入口

近世以降の城でも、入口が明確ではなく、正面が分かりにくい構成のものは少なくありません。

ファサード映えを意識するためには、中央軸を意識した配置で、入口を視覚的に強調することが重要です。

左右対称性

窓や塔、翼部などを左右対称に配置することで、幾何学的にも安定した美しい構図となっています。

左右対称は、建築において秩序や権威、美を表す重要な要素とされ、城の正面性を明確にする効果もあります。

中央の強調

中央入口の装飾に加え、中央部に塔やペディメント、装飾バルコニーなどで、ファサード全体の焦点が明確化されています。

場合によってはドームや時計塔などを配置し、視覚的にも象徴的にも中央性を強めた構成が用いられています。

垂直要素の付加

ゴシック大聖堂などの教会建築の影響を取り入れ、塔や尖塔・ピナクルや装飾煙突といった垂直的要素を加えることで、高さによる象徴性を出しています。

これにより、城に威厳や崇高さ、神聖さを感じさせる表現となっています。

水平分節と階層

コーニスなどによって層を区切り、主階や上階といった階層を明確化することで、建築的な構造を表現しています。

要塞由来から整えられた建築としての印象へと変化させる重要な要素となっています。

装飾的要素の付加

ピラスターや列柱やアーケード、ティンパヌムや彫刻装飾など、実用性を超えた見せるための要素を取り入んでいます。

よって、城を防御施設ではなく象徴建築としての役割を果たしています。

象徴的モチーフ

紋章や王冠、歴史や神話や権力を象徴するモチーフを取り入れることで、城の性格や所有者の立場を視覚的に示しています。

教会建築における宗教的象徴を、世俗的に表現したものといえます。

前景の造形

前庭や広場、橋や池など、軸線上に長いアプローチを設けることで、ファサードの印象を大きく高めています。

ファサードだけの建物単体ではなく、周囲の空間や景観を取り込むことで、より美しさを生み出しています。

以上、今回はお城のファサードについてでした。


意外と少なかったです。どちらかと言うと大聖堂や宮殿の方が多いイメージですね。


そうですね。でもその可能性を広げているのは、歴史主義やロマン主義建築かもしれないですね。



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