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Moeちゃん、今回はリュカルヌのルーツを見ていきましょう。
はい、とても綺麗な装飾の窓の特徴ですね!
リュカルヌとドーマー窓のルーツと起源

アゼ=ル=リドー城のリュカルヌ
リュカルヌの意味や語源と立ち位置
ゴシック後期からルネサンス
ほとんど日本では情報もなく、書籍ではときおりルカルネと記載されていたりします。
世界の名建築解剖図鑑
しかしゴシック後期からルネサンスにかけて、お城の装飾としてはかなり重要なものになっています。
中世ヨーロッパ(特にフランス)で発展し、屋根裏空間(ロフト・屋根階)に採光と換気を与えるための屋根窓として使われました。
スパイアライトとリュカルヌ
「ルカルネ」という読み方は何語かはわかりませんでした。
ラテン語 lucerna(灯り・光) に由来し、lux(光)と同系で、「光を取り入れるもの」という意味が語源です。
こちらの記事
でも少し解説しましたが、屋根(主に塔の屋根)に付随した、装飾されたドーマー窓のことですが、単にドーマー窓ではなく、スパイアライトの概念に近いようです。
スパイアライトリュカルヌ
ドーマー窓が切妻屋根、スパイアライトが尖塔窓、リュカルヌはその中間的な意味合いとも考えられます。
Dormer
には、
「When the structure appears on the spires of churches and cathedrals, it is usually referred to as a lucarne.」
とあるので、基本的には尖塔にあるドーマーはるリュカルヌといって良いようです。
装飾ドーマーという特徴

アンボワーズ城のリュカルヌ
そして単なるドーマー窓ではなく、立面デザインの重要な構成要素として、建築の美の一つを表現しています。
たしかに、なんとなくデザイン的にはゴシック大聖堂由来な気がします。
リュカルヌは教会や大聖堂由来?
意外にもゴシック大聖堂には少ない?
キリスト教と光の概念
そのため、
- クリアストリー(高窓)
- トレーサリー
- 尖頭アーチ
しかし、ゴシック尖塔に小開口は存在したりはしますが、それは窓のある尖塔自体はリュカルヌ的発想ではないと考えられます。
ゴシック教会建築と細かい装飾
そのため、リュカルヌはゴシック教会建築から直接的に継承された建築要素というよりも、光を建築の重要要素として扱う発想や、ゴシック様式における装飾的造形が古典主義様式と交わることで、ルネサンス様式の装飾の一つとして表現されたものと推測することができます。
なるほど、とても奥深いですが、理解できてきました。
それではゴシック様式の教会建築を見てみましょう。
ゴシック教会建築から読み解く流れ
大聖堂におけるタベルナクル
このリュカルヌの成り立ちに関して詳しく書かれているサイトや文献は、見る限り皆無です。
皆無…
私見にはなりますが、流れの一つとして以下が考えられると思われます。
の91〜92ページによると、「立体的ブロックからタベルナクルを経てピナクル」とあります。
こちらもほぼ書籍でも情報が皆無で、ようやく見つけましたが、要はゴシック教会建築におけるピナクルや尖塔の下にあるこの部分は、タベルナクルから来ている、ということです。
タベルナクル?
こちらの記事
でも解説しています。

ヴィンペルクやフィニアル
たしかロワール渓谷のルネサンスのリュカルヌはピナクルなどの装飾がありました。
はい。あの装飾の原型の一つは、このタベルナクルにあると考えられます。
ニッシュ・ア・バルダカン
壁龕(ニッチ)
よって、この教会建築の外壁のニッチ部に設置されたタベルナクル全体の名称を、ニッシュアバルダカン(Niches à baldaquin)と言います。

「Wikipedia」Author:Goombiis • CC BY-SA 4.0
ニッシュアバルダカン?
なので、日本語では天蓋壁龕くらいでしょうか。
なるほどです。
それでは他の大聖堂を見てみましょう。


では、タベルナクルを詳しく見ていきましょう。


その柱はピナクルのような構造を持ち、屋根はヴィンペルクのような切妻屋根となっていたりします。
古代ローマのエディキュラ
Aedicula
によると、
「エディキュラは小さな神社であり、古典建築においては、ペディメントまたはエンタブラチュアで覆われ、対の柱で支えられ、通常は像を縁取るニッチを指します。」
とあります。
さらに、
「特にルネサンス建築を記述する際、エディキュラ形態は「タベルナクル」という語を用いて、タバナクル窓として記述することができます。」
また、
「ゴシック建築においても、エディキュラ(またはタベルナクル)は、そこに刻まれた銘板や祭祀用品、胸像など、その内容に重要性を与える構造的枠組み」
との記載があるように、タベルナクルとも明確に関係性があります。
そしてペディメントなどは古代ギリシャの様式から来ています。
ここでは、エディキュラ(またはタベルナクル)とありますが、エディキュラはどちらかというと古典建築用語なので、ゴシック教会建築の文脈ではタベルナクルという認識が良いかもしれません。
古代ギリシャのディスタイル

Wikipedia「Distyle」Author:Coyau • CC BY-SA 3.0
ベルフライの開口屋根からの流れ
特にゴシック大聖堂は塔がベルフライ(鐘楼)として機能し、その上部に尖塔が載る構成が一般的です。
そのため、鐘楼階に設けられた開口部や装飾が尖塔の屋根にまで伸びていて、こうした表現がリュカルヌに類似したものとして認識される場合や、またはリュカルヌの前兆的段階として捉えることもできるでしょう。

ドーマー窓のルーツや起源を探る
ドーマー窓も教会建築由来?
Dormer
を見ると、
「One of the earliest uses of dormers was in the form of lucarnes, slender dormers which provided ventilation to the spires of English Gothic churches and cathedrals. 」
と記載があり、ドーマーの最も初期の形は、ゴシック建築の尖塔のリュカルヌから来ているようです。

クリストチャーチ大聖堂
1160年から1200年頃建築されたともありますが、1532年に再建されたとあるので、その辺りに造られた屋根と思われます。
しかしこれらはあくまで参考の一つで、ドーマー窓が教会建築から派生したものか、一般住宅から誕生したかを明確に知ることは出来ませんでした。
モンサンミッシェルのドーマー窓

モンサンミッシェルは城と教会が一体になった集合体で、修道院関係者などが今でも住んでいると言われていますが、その住宅もロマネスク期やゴシック期に増えていったとされています。
一見ロマネスク的な外観をしていますが、その時代からそのまま残っているのは考えにくく、なにかしら増改築はしていると思われますが、当時の色を残している可能性もあります。
ロルシュ修道院にドーマー窓の前兆?

「Wikipedia」Author:Kuebi - Armin Kübelbeck • CC BY-SA 3.0
修道院なのでキリスト教会建築の一部ですが、詳しい資料や情報は見つからなかったので、この時代にはこのような飾り的なものは存在していたのかもしれません。
リュカルヌとは意味合いが異なる?
そのため、リュカルヌと意味合いは異なります。
よって、教会の光を取り入れる窓から発展して16世紀に一般住宅の寝室にも取り入れられドーマーという名前が付いた、または寝室から発展した全く別のルーツを持つものと推測されます。
リュカルヌとドーマー、重なり合うところもありますが、このように歴史を見てみると別の概念ということが分かりますね。
次は、電気やガラスの観点から考察してみましょう。
リュカルヌにおける電気とガラスの関係
ゴシック期には電気は無い?
根本的なことを話しますと…
なので、採光するには天井に穴が必要でしたし、ランタンを持ったり火を付けたりした際に煙を上に流すために、スパイアライトや初期のリュカルヌは必要となりました。
よく考えればそうですね!今でこそ普通に電気が付きますが…
便利な時代になりました。
では、電気が出来たのはいつですか?
1879年にエジソンが実用的白熱電球を開発し、この発明によりそれまでの火を使った灯りから電気を使った照明への転換が始まりました。
よって、1880年代頃から都市で電灯網が整備され始めました。
ゴシック期にはガラスもない?
そしてガラスです。
ガラスの発展については、
こちらの記事
に詳しく書いています。
ということは、雨が降ったら濡れる…?
それですが、それもあってリュカルヌという発想自体が乏しかったのかもしれません。
しかし後期ゴシックからルネサンス期にかけてはガラス製造技術が向上し、建築においてガラスの使用が選択肢となっていき、その結果、居住空間を伴う世俗建築へと転用される際に、採光を目的としたガラス付きの開口となり、ドーマー窓が誕生した可能性が考えられます。
このように、関係性や歴史を理解すると装飾ドーマーとして広まった理由も読み解くことが出来ますね。
リュカルヌの発展と様式の違い
ゴシック期のリュカルヌ
にて、
「Dormer windows have been used in domestic architecture in Britain since the 16th century.」
と記載があるように、この時期でのドーマー(リュカルヌ)はフランスではなくイギリスで広まっていったようです。
聖エリザベート教会(マールブルク)

グラスゴー大聖堂

参考サイト
クリストチャーチ大聖堂

ルネサンス期のリュカルヌ
ロワール渓谷の城

シュノンソー城のリュカルヌ
ゴシックリバイバルのリュカルヌ
ナントのサン・ニコラ教会

マインツ大聖堂
