ヨーロッパの城の内部構造や部屋構造を時代別に解説

西洋文化に詳しい王女『ロゼリィ』が解説する『西洋史』

それではMoeちゃん、お城の歴史と分類、そして城の部分要素を理解したので、次は内部構造ですよ。


お城の内部ですか。いよいよなのです。


こちらも、時代区分によって変わってきますので、復習も兼ねて順番にみていきましょう。


はい。


古代の城(ローマ帝国要塞)の構造と配置

カステルム(砦)の構造の配置

まずは、お城の元となった、カステルムとカストルムです。こちらはざっと見ていきましょう。


はい!


カステルムは、後述のカストルムよりも小規模で塔(keep)や見張り台が中心の古代ローマの砦のことで、内部は限られた兵員の宿舎と、物資倉庫でした。

司令官や管理者の居室

小さな寝室兼作業室。
食事や書類管理もここで行われることが多い。

倉庫・貯蔵室

武器・食料・燃料の保管。
場所によっては地階にまとめられることが多い。

見張り塔・内部空間

上層に塔があれば、通路兼見張りスペース。
実質的には居室というより通路・監視用。

カストルム(要塞)の構造と配置

カストルムは、古代ローマの大規模な要塞のことで、
  • イギリスの「ハドリアヌスの城」
  • オーストラリアの「カルヌントゥム」
  • 現ウィーンの「ウィンドボナ」
  • ドイツの「ザールブルク城砦」
などがあります。

プラエトリウム(司令官の邸宅・会議室)


プラエトリウム「Praetorium」は、少数の部屋(寝室+会議室など)のローマ軍司令官や高官の居室です。

参考サイト

タベルナクルム(テント・兵舎)

この兵舎という単語がなかなか見当たらなかったですが、この頃、ローマ軍団の最小単位で、8人が一組となった「Contubernium」という言葉があり、それをそのまま兵舎と意味するという説もあるようです。

しかし違和感があり、Contuberniumは、「共に」を意味する「Con」に、「住まい」「テント」を意味する「tabernaculum」を合わせた言葉と考えられます。

tabernaculum

もしくは、

Wikipedia「Contubernium」
にあるように、「テント(パピリオ)とロバとカストラ(野営地)の2つの部屋を共有する8人の男性で構成されている」とあるので、一部屋4人と考えると、近代英語における「兵舎」を意味する「barracks」のイタリア語「Caserma」である

こちらのページ
に、「4人の兵士のための部屋」を意味するとあるため、「quaterna」が妥当かもしれません。

ホレウム(倉庫)

ハドリアヌスの城のホレウムのイメージ


ホレウム「horreum」は、食料・武器・装備品の貯蔵庫で、通常2〜4棟ありました。

バルネアエやテルマエ(小浴場や大浴場)

大浴場(thermae)や、小規模浴場(balneae)がある場合あり(兵士の衛生管理用)

古代の要塞といっても、一通りのものは揃っていたのですね。


ローマ軍のものは規模が大きなイメージですね。


中世中期の城(要塞)の構造と配置

モット・アンド・ベーリーの構造

巨大帝国ローマ軍の築いたカストルムと比べ、西ローマ帝国解体後に権力基盤は分裂したため、地方の軍隊の要塞であるモット・アンド・ベイリーは、基本的に小規模です。

しかし、この時期から城内に小規模な礼拝施設が現れてきます。


1 木製のドローブリッジ(跳ね橋)
2 木製の門とフェンス
3 チャペル(礼拝堂)
4 木製の門とフェンス
5 ローズホール
6 キッチン
7 バラック(兵舎)
8 かじ屋
9 ワークショップ
10 厩舎(家畜小屋)
11 店舗
12 木製のドローブリッジ(跳ね橋)
13 段差&木製の門塔
14 パリサード(柵)
15 石造のキープ

日本語にしてみました。


ありがとうございます。とても分かりやすいですね。


シェル・キープの構造

レストーメル城の計画書


A
B 客室
C 台所
D 大広間
E 私室
F 礼拝堂


当初木造だったモット・アンド・ベーリーのモット(丘部分)の柵が石壁になった時代の構成は、シェル・キープと呼ばれるこのような形でした。

初期モット・アンド・ベーリーは、モットにあるキープは監視塔としての役目で、各施設や生活の中心は、ベーリーでしたが、このシェル・キープが出来てからは、それら生活圏はモット側に集約されます。

だんだんと要塞のような形になってきました。


中世後期の城(要塞)の構造と配置

次はカーテンウォール式城郭です。


中世要塞!楽しみです!


カーテンウォール式城郭は、カーテンウォールと側防塔でキープなど住居スペースを囲み、ゲートハウスと言われる城門を配置した、中世の特徴的な軍事的要塞です。

カーテンウォール式城郭

はい。それでは、内面構造を見ていきましょう。


カーテンウォール式城郭の構造

今回はカーナーヴォン城を例に見ていきましょう。


カーナーヴォン城!


カーナーヴォン城の構造

「Wikipedia」Author:Cadw • OGL v1.0


A 水門
B 鷲の塔
C 王妃の塔
D 井戸の塔
E 外廓
F 大広間
G 台所
H 侍従の塔
I 王の門
J 内廓
K 黒い塔
L 穀倉の塔
M 北東の塔
N 貯水の塔
O 王妃の門

カーナーヴォン城はこのようになっているのですね。


クアッドラングラー城郭の構造

ボディアム城


カリュー城


ボルトン城


ボディアム城、綺麗過ぎます!


カーテンウォール式城郭の中でも、キープ塔の存在せず、城壁が正方形で形整った形式の要塞を、クアッドラングラー城郭「Quadrangular castle」といいます。

Quadrangular castle
また、「courtyard castle」(コートヤードキャッスル)とも言われます。

中でもボディアム城は、最も綺麗に残されている一例です。

クアッドラングラー城郭?


はい。よく中世の要塞として例に挙げられたりするのはこの形です。


行き着いた先の要塞の完成系の建築様式、みたいな感じですね!


ラルワース城


ラルワース城のように、中世の要塞ではなく近世の城ですが、形式的にはクアッドラングラー城郭と言えるようなお城もあります。

Lulworth Castle
「要塞化された城の復活したスタイルで建てられた」とありますね。

クアッドラングラー城郭は、日本語でどのように呼称するかは全くと言っていいほど資料がなく、

京都大学
の研究サークルの資料には囲郭城郭のような記述がありますが、単なる囲郭ではないのでこれを指しているわけでもなさそうで、それ以外には情報もなく、確証的な名前が見つかりませんでした。

「Quadrangular castle」「courtyard castle」と書かれているため、「中庭式方形城郭」くらいでしょうか。

ボディアム城の構造

では、ボディアム城を例に取ってクアッドラングラー城郭を見ていきましょう。


ボディアム城!!


こちらはボディアム城の計画内面図です。



A 家庭用住居
B チャペル
C 城主の寝室
D 城主の大広間
E 城主の集会部屋
F 飲料貯蔵室
G 食料室
H キッチン
I 家臣の食堂
J 家臣のキッチン
K おそらく応接室
L1 おそらく掃除用具室
L2 おそらく厩舎
M 北東塔
N 東塔
O 南東塔
P 裏門塔
Q 南西塔
R 西塔
S 北西塔(牢獄付き)
T ゲートハウス(左右にガードルーム)
U 内側の土手道
V 外側のバービカン
W 外側の土手道

ほんとに部屋構造も囲むようになっているのですね。


それでは、集中式城郭を見てみましょう。


はい!


集中式城郭の構造

ビューマリス城の構造

「Wikipedia」Author:Cadw • OGL v1.0


「Moat(堀)」があり、敵の接近を妨げ、「Site of Moat(堀跡)」もあります。

堀の内側には、カーテンウォールを隔てて「Outer Ward(外郭)」が広がり、居住の中心ではなく、ツヴィンガーという挟み打ち作戦に使われたりしました。

外郭城壁には複数の出入口と防御施設があり、
  • 北側に「 Llanfaes Gate(スランフェス門)」
  • 海側に「Gate Next the Sea(海側の門)」
  • 南側に「South Gatehouse(ゲートハウス)」
があります。

門の前面には「Barbican(前衛防御)」があり、門に直接到達できない構造になっています。

また、城は海と直結しており、物資や兵員の輸送のために「Castle Dock(船着場)」が備えられ、その近くには城の自給機能を支える「Mill(水車)」が存在しました。

外郭城壁の上部には、守備兵が移動・戦闘を行うための「Gunners Walk(火砲兵通路)」があり、壁を横断できるようになっています。

外郭防御を強化する塔として、
  • Middle Tower(中央塔)
  • South East Tower(南東塔)
  • Chapel Tower(礼拝堂塔)
  • Nouth East Tower(北東塔)
があり、死角のない側面防御を可能にしています。

城の中心であり最終防御線でもある「Inner Ward(内郭)」は、城主と城の中枢機能が集まる空間で、生活に必要な施設がまとめられており、
  • Kichen(台所)
  • Stables(馬小屋)
が配置され、食料供給が効率的に行われるよう設計されています。

階段は塔に面して螺旋階段があるのかと思ってましたが、小さく塔の一部に設置されてるのですね。


このボディアム城とビューマリス城の図を見る限りそうなっているようですね。


こうして各形式の基本構造を学ぶと、よく要塞のお城の作りが分かりました。


それでは、まとめて以下のサイト様が綺麗にまとめていらっしゃるので、応用も兼ねて見てみましょう。


中世の城のベスト防御パーツ中世ヨーロッパの城の構造城の構造もっとブルク

わぁ、基本を知っていると全部理解出来ました!


近世以降の城(居城や宮殿)の構造と配置

さて、Moeちゃん、いよいよ近世の城ですよ!


とっても楽しみなのです!


居住としての城の構造

シャンティイ城の内部構造

「Wikipedia」Author:Daniel VILLAFRUELA


Les grands appartements
S1 Hall d'entrée(玄関ホール)
S2 Antichambre de la salle des Gardes(守衛の間の前室・控え室)
S3 Salle des Gardes(守衛の間)
S4 Le petit cabinet(小書斎)
S5 Le grand cabinet(大書斎)
S6 La grande singerie(戯画が飾られた応接室)
S7 La galerie des batailles(戦争画廊)
S8 Le salon de musique(音楽ルーム)

Les galeries de peinture

S10 Galerie des cerfs(狩猟ギャラリー)
S11 Galerie de peinture(絵画ギャラリー)
S12 La rotonde(円形広間)
S23 La galerie de Psyché(ギリシア神話ギャラリー)
S26 La tribune(高所観覧席)

Parterre de la Volière
Parterre de la Volièreは、鳥小屋のある整形式庭園です。

Cour de la Capitainerie
Cour de la Capitainerieは、狩猟・領地管理を行う建物群に付属する中庭です。

Cour d'Honneur
Cour d'Honneurは、威厳の中庭です。


ヴォー=ル=ヴィコント城の構造


Costé du Jardin(庭園側)
Cabinet(書斎)
Chambre(寝室)
Antichambre(待合室)
Grand Sallon(大広間)
caves(地下倉庫)
bains(風呂)
Vestibule(玄関前室)
Garde-robe(衣装室)
Costé de la Cour(中庭側)

居城としての城は、特に中世要塞ほど決まった形はなく、またバシリカ式の教会や大聖堂のように形式はないですね。


そうですね。大広間や衣装室や書斎など、居城や城館ならではの特徴はありますが、全体の形や配置などは自由度がありますね。


城館の内部寸法

では最後に、一般的な城館の部屋の寸法を考察してみましょう。


はい。


参考に、日本の部屋は以下の通りです。


6畳:約2.5m × 3.5m


10畳:約3.5m × 4.5m


これよりは大きそうです。


ヴェルサイユ宮殿の部屋の寸法

意外と寸法の資料がほとんどなかったのですが、例えばようやく見つけたベルサイユ宮殿の資料は以下になっていました。

ヴェルサイユ宮殿
この頃はピエという単位で計測されていて、32ピエのほぼ正方形で、1ピエは32.48cmなので、

32 × 32.48 = 1039.34cm

よって、ヴェルサイユの寝室の幅は、約10mになります。

このような城の資料は、所有者や公開情報、内部撮影禁止などの理由もあり、専門的に情報を入手できる城が限られています。


たしかに、城館なら個人所有のお城も多いですよね。


その中でヴェルサイユ宮殿は比較的制限ぎ緩いみたいですね。



これがヴェルサイユ宮殿の内部構造です。


紫色がフランス国王の所有する部屋で、黄色が王妃の所有する部屋で、赤色が風呂と通路です。

一番右の一番濃い紫色の一番上の濃い紫の部屋が寝室なので、濃い紫の他の部屋もだいたい10mくらいになっています。

その左の薄い紫は、書斎や台所などで、やや小さめになっています。

王の寝室

王の寝室


こちらがフランス国王の寝室です。


ベッドが小さく見えるのです。


そうですね。


ちなみに10m×10mは日本では何畳ですか?


約60畳です。これくらいです。



宴会場ですか…?


はい。それくらいのイメージです。


王妃の寝室

一方、王妃の寝室は、黄色の部屋の上から2番目の部屋で、大きさは同じくらいです。


こちらが王妃の寝室です。


どちらにしても広いです。


王の寝室(1701年以降)

ちなみに、1701年にフランス国王は一番真ん中の薄い紫色の部屋に寝室を移しましたが、

こちらのサイト
には90平方メートルと記載があるので、例えば9m × 10mのような構成です。

こちらがおそらくこの寝室です。



高級感があります。


一般的な城館の寝室や私室の寸法は?

ということで…


ヴェルサイユの寝室や私室が、約10m四方でした。

特にヴェルサイユ宮殿は絶対王制で、フランス革命前なので、他の宮殿などより広かったと考えられます。

そう推定すると、王侯クラスの城館の私室は一辺が6m〜8mと考えられます。

更に小型の城館クラスであれば、4m〜6mくらいでしょう。

ちなみに絶対王制(絶対君主制)は、

こちらの記事
で解説しています。

5m四方であれば約16畳です。


16畳…日本では、広いリビングくらいですね。


あまり寸法の資料は少ないですが、これくらいの部屋の寸法が、小規模な城館やカントリーハウスなどの寝室や寝室と推測できます。

以上、今回はお城の内部構造と、私室の寸法まで考察していきました。


ヴェルサイユ宮殿はとても広かったです。


宴会場のような広さでしたね。


それでは、今から王女様のお部屋で宴会を開きましょう!


残念ながら、私のお部屋はヴェルサイユ宮殿ほど広くはないのです。。。



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