西洋の大聖堂や城や宮殿の床の素材やデザインとオプスセクティレ(大理石の象嵌細工)

西洋文化に詳しい王女『ロゼリィ』が解説する『西洋史』

大聖堂や城や宮殿に使われる主な床材

天然石(大理石)


大理石(マーブル)は、石灰岩などが地下深くで熱と圧力を受けて再結晶化してなめらかでつややかな石になった変成岩です。

白を基本として、灰色・ピンク・緑・黒・黄色・赤など実に多彩な色があります。

大理石は、自然な「流れ模様」や「筋状の模様」があります。

単一色の中にさまざまな濃淡が混じるため、上品で深みのある色合いで高級感・重厚感があります。

イタリア(特にフィレンツェやローマ)など南欧の教会で多用。

色の異なる大理石を組み合わせて模様を作るインレイ装飾(象嵌)が主流。

非常に豪華で荘厳、高級感があり、権威の象徴でもあった。

  • サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂
  • サン・ピエトロ大聖堂
など。

その他の変成岩としては、
  • 結晶片岩
  • 片麻岩
  • 蛇紋岩
  • 蛇灰岩
などがありますが、あまり使われません。



天然石(花崗岩)


花崗岩(かこうがん)は、地球内部のマグマがゆっくり冷えて固まった火成岩(かせいがん)の一種で、非常に硬くて丈夫な天然石です。

花崗岩はわりとどこにでもある石で、山間部などで普通に見られる石です。

ただ商用に使える高品質な石材は、採石しやすい特定地域に集中しています。

耐摩耗性・耐水性・耐酸性に優れており、模様は粒状(斑模様)で、色も黒・赤・グレー系などが豊富です。

表面に光沢仕上げ(ポリッシュ)やバーナー仕上げ(ざらざら)など多様な仕上げが可能です。

日本では、兵庫県神戸市の御影石や岡山市の万成石などが有名です。

火成岩は他に、
  • 閃長岩
  • 閃緑岩
  • はんれい岩
  • 流紋岩
  • 安山岩
  • 玄武岩
  • 凝灰岩
などがありますが、建築材にはあまり用いられません。


天然石(石灰岩・砂岩など)

石灰岩や砂岩は堆積岩の一つです。

石灰岩はサンゴ礁や貝殻などの生物起源のカルシウム成分が堆積してできた岩です。

石材として加工がしやすく、耐久性も高い。

地元で採れる安価な材料として地方の教会や修道院で多用。

無装飾または簡素な仕上げが多く、質素な雰囲気。

  • 英国のウィンザー城
  • ドイツのノイシュヴァンシュタイン城
など。

砂岩は花崗岩や大理石に比べて柔らかく摩耗しやすく、吸水性があるため屋外や湿気の多い場所には不向きなため、床にはシュパイアー大聖堂など少ないが、
  • ハイデルベルク城
  • スターリング城
には壁や塔に使われています。

堆積岩は、他には
  • 粘板岩(スレート)
  • トラバーチン
などがあります。

石灰岩


砂岩


タイル(大理石調タイルなど)

大聖堂や城や宮殿というよりは、現在の邸宅やホテルや公共施設などに多いですが、大理石よりも安価で済ませるするため、大理石調のタイルなどが使われます。

高級感が出るのはやはり大理石ですね。


綺麗な自然の模様のようなものがほのかにあるのが良いですね。


では一通り見たところで、次は技法を解説しますね。


はい。お願いします。


寄木張り(パルケ)


大聖堂や教会や礼拝堂、宮殿の大広間などでは床は主に大理石が使われる場合が多いですが、寝室や書斎などの私室や城館などは、大理石ではなく、木材でできた寄木張りが使われるケースが多いです。

寄木張りと似た言葉で「寄木細工」がありますが、「寄木細工」は日本の技術で、Wikipediaにも

寄木細工
のように寄木細工のページがあったりします。

一方、ヨーロッパの木製床は独自のもので、こちらの日本語は「寄木張り」です。

寄木張り
寄木張りは、17世紀のルイ14世の時代に寄木床として宮殿で広く使われるようになります。

それまでの宮殿では大理石床が主流でしたが、冷たい、滑る、湿気などの問題がありました。

そのため、木の寄木床が採用され、寄木張りが使われ始めました。

大聖堂や城や宮殿に使われる主な床の技法

オプスセクティレ

画像例


このような床は、オプス・セクティレ(大理石の象嵌細工「Opus sectile」)です。

オプス・セクティレは、大理石や真珠層、ガラスなどの材料を切って、壁や床にはめ込み、絵や模様を作る古代・中世の美術技法のことです。

モザイクよりも大きめの断片(ピース)を使い、幾何学模様や人物、動植物などの写実的なデザインも作れます。

ピースは不定形で、デザインに合わせて精密にカットされ、大理石や瑠璃、貝殻など、色の異なる素材を使ってコントラストを出すこともできます。

wikipediawikipedia(英語)

オプスセクティレ、響きがカッコいいのです。


後の様々な大理石の象嵌細工の元となった技法なのですよ。


コスマティ(コスマテスク)


オプスセクティレに似た技法、またはオプスセクティレの技法を駆使して応用した技法に、コスマティ(コスマテスク)があります。

コスマティ(コスマテスク)は、大理石を使いますが、基本的にはガラスモザイクと大理石の組み合わせで構成されます。

ちなみに、コスマティという名前は、装飾的な幾何学的モザイクの芸術家から取った名前で、幾何学的なデザインを重要視し、こちらも教会の床などに用いられました。

オプトセクティレとモザイクタイルとの間みたいな存在ですね。


モザイクタイル


モザイクタイルは、模様全体が小さなピースで構成され、職人が1ピースずつ手作業で設置します。

よって、制作に数ヶ月〜数年かかることもあります。

中世~ルネサンス期の教会建築に多く、大理石、ガラス、ラピスラズリなどの高価な石材を使って、宗教的・権威的価値を高める効果があります。

  • ケルン大聖堂
などがモザイクタイル床です。

ピエトラ・デューラ

ドゥブロブニク大聖堂


ピエトラ・デューラ「Pietra dura」も、オプスセクティレから発展した象嵌細工の一つです。

ピエトラ・デューラは、ルネサンス期のイタリアで誕生した、オプスセクティレよりも細かい模様を主とします。

床も作られたりしましたが、机や壁の一部や小物などの装飾が多く作られました。

Pietra_dura

ウォータージェット大理石象嵌


これが、現代版のオプスセクティレです。


オプスセクティレは、手作業で行う古代や中世の大理石象嵌でしたが、ウォータージェット大理石象嵌「waterjet marble inlay」は、それをCNC加工というコンピュータ数値制御を用いた高精度加工技術で、超高圧水と研磨剤で切断する工法になります。

参考サイト
具体的には、このような現代の邸宅や城館、高級ホテルや洋風公共施設などに取り入れられています。

参考サイト

ウォータージェットでの大理石象嵌は比較的新しく、ウォータージェット加工は1960年代~1970年代頃から発達し、大理石象嵌の用途としては1980年代〜1990年代に広まっていきました。

産業革命後からそれまでは主に電動研磨機でしたが、ウォータージェット加工が出来てからはそれにとって代わりました。

Water jet cutter

現代の洋風の床はこのような工法で作られているのですね!


大聖堂や城や宮殿の床のパターン

市松模様の床(大理石象嵌)

ヴェルサイユ宮殿トリアノンの床


こちらは大聖堂や城や宮殿でよくあるパターンの一つで、市松模様の床です。

これは、近くで見ないとわかりにくいですが、白と黒の大理石で組んであります。

幾何学模様の床(大理石象嵌)

ラテラノ大聖堂の床


メダリオン床(大理石象嵌)

ベルギー中央アフリカ王立博物館の床

「wiki」Author:Lionel Allorge


メダリオン床「Marble Inlay Medallion」は、近世に流行した幾何学模様がデザインされた大理石象嵌の床です。

メダリオンとは、メダルの形をした装飾模様で、床などにその模様が連続的に配置されています。

Floor medallion
メダリオンについては、

こちらの記事
で解説しています。

メダリオン模様は、下記解説の現代のウォータージェット大理石象嵌にもよく使われています。

参考リンク

ヴェルサイユ床(寄木張り)

ヴェルサイユ宮殿王太子の図書室の床


ヴェルサイユ宮殿によく使われているこのパターンは、実際にヴェルサイユ床「Parquet Versaille」と呼ばれています。

こちらは王太子の図書室の床ですが、ヴィーナスの間や閣議の間など、様々な部屋で使われています。

参考リンク参考リンク参考リンク

ヘリンボーンの床(寄木張り)

ヴェルサイユ宮殿の戦闘の回廊の床


ヘリンボーンは、城館や宮殿の一部の間や部屋などで使われています。

こちらはヴェルサイユ宮殿の戦闘の回廊の床ですが、ヘリンボーンが使われています。

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