レンガの歴史や様式とレンガの積み方や並べ方の名前とパーツの名称とホローブリックまで

西洋文化に詳しい王女『ロゼリィ』が解説する『西洋史』

Moeちゃん、今回はレンガについてです。


西洋風の建物にもよく使われていますね。


その西洋風の建物ですが…


建物ですが…???


本場のヨーロッパのレンガ建築とはちょっと作りが異なるのです。


そうなのですか?


それでは、レンガの歴史や基礎を見ながら、読み解いていきましょう。


はい!


レンガの歴史と成り立ち

日干しレンガ

アフリカや中東のレンガ

チュニジアの日干しレンガ遺跡


レンガは人類最古の建築材料の一つで、紀元前4000年頃の古代メソポタミア文明にその起源を持ち、古代メソポタミアの都市遺跡からは、多くのレンガが発見されています。

その頃のレンガは、日干しレンガ(アドベ)と呼ばれるレンガで、現在の火で固めるレンガとは異なり、粘土や藁を混ぜて型に詰め、太陽で乾燥させるレンガでした。

日干しレンガは、現在ではアフリカ、中東、南米、中央アジアなどの乾燥地帯で限定的に使われているくらいで、現代で通常使われるレンガは焼成レンガというレンガになります。

焼成レンガ


ヨーロッパのレンガ

紀元前3000年頃、火を使って焼き固める焼成レンガが登場し、これにより耐水性・耐久性が飛躍的に向上しました。

古代ローマではこの焼成レンガが広く使われ、ローマ建築の礎となりました。

中世ヨーロッパでは、石材が手に入りにくい地域では焼成レンガが主材料として重宝され、ゴシック建築においてもレンガ造りの教会が、北ヨーロッパで多く建てられました。

産業革命での大量生産

18世紀の産業革命で大量生産が可能になり、都市部の住宅や工場に焼成レンガが多用されるようになります。

イギリス、フランス、ドイツなどでレンガ建築が発達し、さまざまな積み方(ボンド)や使い方が生まれました。

産業革命については、こちらの記事にて詳しく解説しています。


日本でのレンガの歴史と現在のレンガ

日本でのレンガ建築の成り立ち

明治時代からのレンガ建築と埼玉の深谷

江戸時代末期に、イギリスやオランダからレンガが伝えられた日本では、明治時代にドイツ人建築家のヴィルヘルム・ベックマンとヘルマン・エンデを日本に招き、1860年頃からレンガの建物が作られました。

そして1887年に、日本煉瓦製造株式会社がドイツ人技師チーゼを招いて、日本初の機械式レンガ工場を埼玉の深谷に設立しました。

今はその工場はありませんが、旧煉瓦製造施設として残されており国重要文化財に指定され、現在は深谷駅などレンガ建造物にも力を入れています。

埼玉県深谷駅のレンガの外観


地震に弱いレンガから鉄筋コンクリートへ

1923年の関東大震災でレンガ構造の建物が大被害を受けたため、鉄筋コンクリート造が主流になってきました。

そのため、煉瓦風のタイルも様々な種類が存在し、洋風の雰囲気を出すために、木造や鉄筋コンクリート造の表面に張り付ける仕上げ材としても用いられるようになりました。

日本は地震が多いのです…


現代では建築法も改定され、地震についても厳しくなり、ヨーロッパのように、組積造でのレンガの建築は厳しくなりました。

よって、日本での洋風建築は、内側が木造やRC構造などでの、外観のみレンガ風の建物などになっています。

なるほど。耐震を考えた構造になっているのですね。


日本の住宅建築のレンガっぽい外観

ブリックタイル(レンガ調タイル)


ブリックタイル(レンガ調タイル)は、セメントに軽量骨材を混ぜてレンガ風に成形・着色したタイルのことです。

厚みは10〜20mmほどで、外壁や内装に貼り付けて使います。

本物のレンガに近い質感を再現しつつ、軽量かつ施工しやすいのが特徴です。

装飾やデザイン重視の住宅でよく使われます。

窯業系サイディング


窯業系サイディングは、セメントと繊維などを混ぜて成形・塗装した外壁パネルです。

表面にレンガ風の模様や凹凸がつけられており、見た目だけレンガ調に仕上がっています。

住宅の外壁材として最も普及しているタイプです。

厚みは14〜18mmほど。耐火性・防水性・コスト面でも優れています。

窯業系サイディングのレンガ調は、量産型の洋風寄りのコンテンポラリー住宅に多いです。


レンガのパーツの名前の一覧

レンガ自体の各部名称

ストレッチャー(長手)


ストレッチャーは、日本語で「長手」とも言われ、レンガの長い側面のことです。

ヘッダー(小口)


ヘッダーは、日本語で「小口」とも言われ、レンガの短い側面のことです。

ベッド


ベッドは、レンガの上面と下面のことで、日本語のサイトではほとんど情報が無いですが、

こちらのサイト
にきちんと書かれています。

レンガの接着部の名称

モルタル

モルタルの用途別の名前を挙げていきます。


目地モルタル

目地モルタルは、組積造で最も基本的なモルタルです。

レンガ同士の隙間(目地)に充填されるモルタルで、レンガの接着が用途です

下地モルタル
下地モルタルは、主にブリックタイルのために張付けや仕上げの土台とするためのモルタルです。

張付けるために土台を平らにしたり強度を確保したりする用途で利用されます。

張付けモルタル
張付けモルタルは、ブリックタイルを下地に貼り付けるためのモルタルで、主に
  • コンクリート
  • ALC
  • モルタル下地
などにレンガを接着する用途で使用されます。

モルタルは時間を置いたら固まるという特性を利用して、接着以外に下地としても使われているわけなのですね。


シーリング


ブリックタイルなどは、接着とは別に雨水の侵入防止のひび割れ対策を施すことがあります。

シーリング「Sealing」またはシーラント「Sealant」と言います。

レンガの積み方の名前の一覧

芋積み


芋積み(スタック・ボンド)は、レンガを長手方向に並べて、縦の目地を上下で揃える積み方です。

芋の根が規則正しくならんでいるように見えることからそう呼ばれるようになったと言われています。

施工が簡単でレンガの使用量が少ない利点がありますが、構造的には弱くなります。

馬積み


馬積み(ランニング・ボンド)は、レンガを長手方向に並べて、各段で半分ずらす積み方です。

馬の足跡が左右交互に付く様に似ていることから呼ばれるようになったと言われています。

目地が交互になることで構造的に強く安定するので、最も一般的な積み方です。

ドイツ積み

全て小口で目地を交互する積み方で、「小口積み」とも言います。

アメリカ積み


イギリス積み


イギリス積み(イングリッシュ・ボンド)は、長手(長い面)と小口(短い面)を一段ごとに交互に積む積む方式です。

1段目はすべて長手、2段目はすべて小口というように交互に配置され、目地(継ぎ目)が縦にも横にもよくずれるため、構造的に非常に安定し、強度が高いのが特徴です。

倉敷アイビースクエア


イギリスの工場設計を忠実に再現したイギリス積みが見どころとなっています。

アイビースクエア公式

フランス積み


フランス積み(フレンチ・ボンド)は、一段の中で長手(長い面)と小口(短い面)を横に交互に配置する積み方式で、「フランドル積み」や「フレミッシュ積み」とも呼ばれます。

各段で模様のようなパターンができるため、見た目に美しく装飾的なのが特徴です。

東京北品川の正徳寺


オランダ積み


ヘリンボーン積み


ブリックスタイル (レンガ調スタイル)

「ブリックスタイル」と「ブリックタイル」という言葉を並べてしまうと混同しそうでややこしいのですが、ブリックスタイルは、レンガ(またはレンガ風のもの)を使ったスタイルのことです。

ブリックタイルは、レンガ調タイルのことで、現代の住宅などに多く使われています。

ブリックタイルは本物のレンガよりも軽く安く手に入るので、お手軽にレンガ風のデザインにするのに適しているのです。

本物のレンガを使ったブリックスタイル

ベーシックなレンガ


ホローブリック


前川國男が発明した、ブリックスタイルです。

神奈川県立図書館や、写真の岡山県庁などが有名です。

ホローブロックという言葉もあるので誤認しそうになりますが、ホローブリックです。


前川國男はモダン建築家なのでコンクリートブロックと思いがちですが、こちらはレンガで作られています。

岡山県庁のホローブリックのコーナーには、以下の説明書きがあり、このように綴られています。



「本島、東集、湿り下、前会席に館の3階に設けられている孔の開いた中空レンガは、ホローブリックと言います。この材料は、焼物であることから、コンクリート素材のブロックと区別して、ブリックと呼んでいます。
もともと神奈川県立図書館建設のために開発されたもので、子の奥行きを大きくし日差しを遮るだけでなく、内部を抽掛けにし、光を反射させることによって室内に採光を届ける工夫が施されたものです。
前川國男が設計した他の施設でも多く採用されているこの中空レンガは、岡山県庁舎でもひとつのアクセントになっています。」

説明書きがされているのは嬉しいですね!



コンクリートブロックではなく、レンガなのですね!これで証明出来ましたね。


タイルを使ったブリックスタイル

ブリックタイル


ベーシックなレンガ(ブリック)風のタイルです。

スクラッチタイル


スクラッチタイルは、表面に引っかき傷のような線模様(スクラッチ加工)があるタイルのことです。

スクラッチタイルは煉瓦からタイルに変わる際の過渡期の建材で、大正時代によく使われました。

レリーフタイル


レリーフタイルは、立体的な模様やデザインが浮き彫り(または沈み彫り)になっているタイルのことです。

擬石タイル


ブリックスタイルといえるかは微妙ですが、擬石(ぎせき)タイルの壁などは、積み方がブリックスタイルに似ておりお洒落感を演出することができるので、最近の日本住宅でもよく見かけます。

本物のレンガ建築

ヨーロッパのレンガ建築

ヨーロッパのブリックスタイルは、現代では補強も備えたりしていますが、歴史的には組積造で建てられていたりします。

ヨーロッパ、特に北ヨーロッパでは、建物にレンガが普通に使われています。

オランダのミデルブルフの街並み

ポーランドのワルシャワの街並み

イタリアのシエナの旧市街

日本のレンガ建築

日本のレンガ建築は、現代では上記に解説したように、耐震などの関係でほとんどがブリックタイル(レンガ調タイル)か窯業系サイディングで、一般住宅には本物のレンガ建築はほぼ見られません。

しかし一部の歴史ある公共建築物や邸宅などには、ごく稀に見られます。

東京駅 丸の内駅舎

横浜赤レンガ倉庫

北海道庁旧本庁舎

神戸文学館

ヨーロッパの建築様式としてのレンガ

ヨーロッパの建築様式としてのレンガスタイルの扱われ方があります。

主に北ヨーロッパで広まった様式の一つで、以下のようなスタイルがあります。

ブリックロマネスク

Brick Romanesque

ドイツのイェリホー修道院

「Wikipedia」Gottfried Hoffmann • CC BY 3.0


ブリックゴシック

ブリックゴシック様式は、レンガを用いたゴシック様式です。

Brick Gothic

ポーランドのマルボルク城


リューベックの聖マリア教会


ブリックルネサンス

ブリックルネサンスは、レンガを用いたルネサンス様式です。

Brick Renaissance

デンマークのボルセン


レンガ造りの建物は、なんとなく洋風なイメージはありましたが、きちんと理解するとこういうことだったのですね。


はい。このようにレンガはヨーロッパ由来の建築素材です。ルーツや流れを押さえておくと、イメージもしやすくなりますよね。


日本がレンガが少ない理由、そしてブリックタイルが主流の理由も知れて良かったです。


ブリックタイルでも、コンテンポラリー的な要素はありますが、洋風なイメージを少し感じる理由が分かりましたね。



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